🧭自分ラボ📘NSCA-CPT
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CHAPTER 4 領域4 読む目安 約15分 / ⚡暗記ボックス 5

領域4|安全性・緊急時の手順・法的諸問題

出題比率 13%(採点対象 20問/全155問中)


この章の狙い

4領域のなかで最も問題数が少ない領域です。ただし、得点効率は4領域で最も高い。理由は単純で、覚えるべき内容が「数値」と「手順」と「原則」に整理されていて、応用的な判断を要する設問が比較的少ないからです。

領域1〜3が「どう指導するか」を問うのに対し、この領域は 「事故を起こさないために何を整えておくか」「起きてしまったら何をするか」「法的に自分をどう守るか」 の3点に集約されます。

出題テーマ 目安 難易度 対策
施設の設計・レイアウト・環境基準 約4問 数値をそのまま暗記
器具の点検・保守・清掃 約3問 頻度(毎日/週次/月次)で整理
緊急時対応計画と一次救命処置 約6問 手順の順番が命
法的責任・業務範囲・記録 約5問 過失の4要件と「やらないこと」
職業倫理・リスクマネジメント 約2問 常識で解けるが用語は覚える

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得点戦略: この領域は「捨てない」。20問すべてを取りにいく価値があります。逆に、領域2・3で1問を取り返すより、ここで1問落とさないほうがはるかに安上がりです。


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4-1. 施設の設計とレイアウト

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

配置の3原則

施設のレイアウトは、感覚ではなく 安全上の理由 で決まります。

  1. 見通しがきくこと — 監督する立場の人間が、どこにいても全体を視認できる。柱や高い収納で死角を作らない
  2. 重い物ほど低く・外周に — 高重量のフリーウェイトは、落下しても被害が最小になる位置に。プレートやダンベルは床に近いラックへ
  3. 動線を交差させないこと — 通路がトレーニング動作の範囲と重ならないようにする。特にフリーウェイトの背後を人が通る配置は避ける
配置の原則:出入口から見通せること。重量物は低く外周へ。通路は交差させない フリーウェイト 器具どうしの間隔 0.9m 以上 プラットフォーム 2.4×2.4m 程度 マシン/サーキット 一方向に流れる配置。 可動部の周囲に余裕をとる 有酸素性エリア 機器間 0.5〜0.9m。 トレッドミル後方は広くとる ストレッチ/体幹 床マット。フリーウェイトの 落下範囲から離す 主通路 1.2m 環境の目安 室温  20〜22℃ 湿度  60% 未満 換気  毎時 8〜12 回の空気交換 天井高 3.6〜4.2m 通路幅 0.9m 以上(主通路 1.2m) 鏡   床から 50cm 以上離す 騒音  90dB 未満 床   フリーウェイト部はラバー 1人あたり面積の目安 約9〜10m² ⚠ 数値は施設設計の一般的な目安。試験では「通路幅」「器具間隔」「天井高」「室温・湿度」が問われやすい。 ⚠ AED・救急箱・電話・非常口は、どこからでも見える位置に表示し、全スタッフが場所を即答できる状態にしておく。
図4-1 施設のゾーニングと、押さえておくべき環境の数値。フリーウェイトは外周、有酸素性エリアとストレッチエリアは動線を分けて配置する。

覚えるべき数値

⊳ この節の問題を解く(5問・7枚)

試験ではこれらの数値が単独で問われます。理由まで覚える必要はありません。数字をそのまま入れてください。

項目 目安
室温 20〜22℃
湿度 60%未満
換気 毎時 8〜12回の空気交換
天井高 3.6〜4.2m(パワー種目には高さが必要)
通路幅 0.9m以上(主通路は1.2m)
フリーウェイト器具の間隔 0.9m以上
有酸素性機器の間隔 0.5〜0.9m
リフティングプラットフォーム 2.4×2.4m 程度
鏡の設置 床から50cm以上離す
騒音 90dB未満
1人あたりの面積 約9〜10m²

覚え方: 「通路0.9/主通路1.2/天井3.6〜4.2/鏡は床から50cm」。とりわけ 鏡と床の距離 は忘れやすいので単独で覚えてください。プレートが転がって鏡に当たり、割れて負傷する事故を防ぐための規定です。

床材

エリア 床材 理由
フリーウェイト ラバー(弾性素材) 落下衝撃の吸収、器具と床の保護、滑り止め
プラットフォーム 木+ラバー クリーン系のバー落下に耐える
有酸素性エリア ラバーまたはカーペット 振動と騒音の低減
ストレッチ・体幹 マット 直接床に接するため清潔性も重視

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4-2. 器具の点検・保守・清掃

⊳ この節の問題を解く(2問・3枚)

事故の多くは「壊れかけた器具を使い続けたこと」から起こります。そして法的には、危険な器具を放置したこと自体が注意義務違反になります。

頻度で覚える

頻度 内容
毎日(使用のたび) 表面の清掃・消毒/マットの汗の拭き取り/プレートやダンベルを所定の位置に戻す/床に障害物がないか
週次 ケーブル・ベルト・チェーンの摩耗確認/ボルト・ナットの緩み/マシンの可動部の異音・引っかかり
月次 潤滑(レール、ペダル、ベアリング)/トレッドミルのベルト張力とアライメント/機器の較正(キャリブレーション)
随時 破損の発見時は直ちに使用を停止し、掲示して隔離。修理完了まで戻さない

⚠️ 引っかけ注意 「破損した器具を見つけたときの最も適切な対応は?」という設問で、「使用を控えるよう口頭で伝える」は誤りです。正解は 「使用禁止の表示をして物理的に使えないようにする(隔離する)」。口頭の注意は、伝わらなかった人には無効だからです。

清潔と感染対策

⊳ この節の問題を解く(2問・2枚)

  • 皮膚が触れるすべての面(ベンチ、マット、ハンドル)は使用のたびに清拭
  • 消毒薬は メーカーが指定する接触時間 を守る(吹き付けてすぐ拭き取ると効果がない)
  • 血液や体液が付着した場合は、すべて感染性があるものとして扱う(標準予防策)。手袋を着用し、専用の手順で処理・廃棄する
  • スタッフの手指衛生、タオルの共用禁止、水分補給の容器の共用禁止

📘 標準予防策(ユニバーサル・プリコーション)=「誰の血液・体液であっても、感染性があるものとして扱う」という考え方。相手が感染しているかどうかを確認してから対応を変えるのではなく、最初から全員に同じ防護を行うのが原則です。


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4-3. 緊急時対応計画(EAP)

⊳ この節の問題を解く(3問・6枚)

📘 緊急時対応計画(EAP: Emergency Action Plan)=緊急事態が起きたときに、誰が・何を・どの順で行うかを事前に文書化した計画。作ってあるだけでは意味がなく、全スタッフが訓練を受けて実行できる状態にあって初めて機能します。

A 計画に必ず書いておくもの(事前) ① 人と役割 誰が119番するか 誰がAEDを取りに行くか 誰が入口で救急隊を誘導するか ② 物と場所 AED・救急箱・電話の位置 施設の住所と最寄り出入口 鍵・シャッターの解錠手順 ③ 連絡先 救急・医療機関・管理者 クライアントの緊急連絡先 既往歴・アレルギーの記録 ④ 訓練と記録 定期的なシミュレーション CPR-AED認定の有効期限管理 インシデントレポート様式 B 実際に起きたときの流れ 1 安全確認 (自分と周囲) 2 反応の確認 大声で応援を呼ぶ 3 119番通報 +AEDを手配 4 応急処置 CPR/AED/止血 5 引き継ぎ +記録を残す ⚠ EAPは「作ってあること」ではなく「全スタッフが訓練済みであること」が要件。書棚にあるだけの計画は機能しない。 ⚠ トレーナーは診断・治療を行わない。応急処置と救急要請までが役割で、そこから先は医療者に引き継ぐ。
図4-2 緊急時対応計画に含めるべき4要素(事前)と、実際に発生したときの5ステップ(事後)。

計画に含めるもの

① 人と役割の割り当て

  • 誰が救急要請(119番)するか
  • 誰がAEDを取りに行くか
  • 誰が救急隊を入口で迎え、現場まで誘導するか
  • 誰が他のクライアントを誘導・整理するか

役割はあらかじめ人を指名しておくのが原則です。緊急時に「誰か119番して」と叫ぶと、全員が「他の誰かがやるだろう」と考えて誰も動かないことがあります(傍観者効果)。実際の場面でも 「そこの青い服の方、119番をお願いします」 と特定して指示します。

② 物と場所

  • AED・救急箱・電話の設置場所(全スタッフが即答できること)
  • 施設の正確な住所と、救急車が入る出入口
  • 施錠されている扉の解錠手順

③ 連絡先

  • 救急、最寄りの医療機関、施設管理者
  • クライアントの緊急連絡先、既往歴、アレルギー、服用薬(入会時の書類から即座に取り出せること)

④ 訓練と記録

  • 定期的なシミュレーション訓練
  • スタッフのCPR-AED認定の有効期限管理
  • インシデントレポートの様式を用意しておく

発生時の流れ

  1. 安全確認 — まず自分と周囲の安全。倒れている人に駆け寄る前に、原因(落下した器具、電源、床の水など)を確認する
  2. 反応の確認 — 肩を叩いて大声で呼びかける。同時に大声で応援を呼ぶ
  3. 救急要請とAED手配 — 人を指名して依頼する
  4. 応急処置 — CPR、AED、止血など、訓練を受けた範囲で行う
  5. 引き継ぎと記録 — 救急隊に状況を伝え、その後インシデントレポートを作成する

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4-4. 一次救命処置(CPR・AED)

⊳ この節の問題を解く(5問・5枚)

NSCA-CPTの受験要件として、有効なCPR-AED認定の保持が求められています。試験でも手順が問われます。

成人の一次救命処置。トレーナーは有効なCPR-AED認定の保持が受験要件でもある 1 反応を確認する 肩を叩き大声で呼びかける 2 応援・119番・AED 人を指名して依頼する 3 呼吸を確認する 10秒以内。死戦期呼吸は「なし」 4 直ちに胸骨圧迫 迷ったら圧迫を始める 胸骨圧迫の質(最重要) 場所 胸骨の下半分 速さ 100〜120回/分 深さ 約5cm(6cmを超えない) 解除 毎回、胸を完全に戻す 中断 最小限にする 人工呼吸ができる場合    圧迫30回:人工呼吸2回 交代 1〜2分ごと(疲労で質が落ちる) 訓練を受けていない者は圧迫のみでよい AEDが届いたら ① 電源を入れる ② パッドを胸の右上と左脇腹側へ ③ 解析中は誰も触れない ④ 指示に従いショック ⑤ 直後に胸骨圧迫を再開 ・胸が濡れていれば拭き取る ・貼付薬ははがして拭く ・ペースメーカーの膨らみは避けて貼る 救急隊に引き継ぐまで中断しない ⚠ 「呼吸があるか判断に迷う」「死戦期呼吸のようだ」は、いずれも心停止として扱い直ちに圧迫を開始する。
図4-3 成人の一次救命処置。胸骨圧迫の「速さ・深さ・解除・中断」の4要素と、AEDの使用手順。

胸骨圧迫の質

覚えるべきは4つの数値・原則です。

要素 基準
場所 胸骨の下半分
速さ 100〜120回/分
深さ 約5cm(6cmを超えない)
解除 毎回、胸壁が完全に元に戻るまで力を抜く
中断 最小限にする
人工呼吸との比 30:2(訓練を受けている場合)
交代 1〜2分ごと(疲労で質が落ちるため)

📘 死戦期呼吸(あえぎ呼吸)=心停止直後にみられる、しゃくり上げるような不規則な呼吸。正常な呼吸ではありません。これを「呼吸あり」と誤認して胸骨圧迫を遅らせることが、救命率を大きく下げる原因になります。

⚠️ 引っかけ注意 「呼吸があるかどうか判断に迷った場合」の正解は、心停止として扱い、直ちに胸骨圧迫を開始するです。「もう一度確認する」「呼吸が戻るまで様子を見る」はいずれも誤り。迷ったら圧迫が原則です。

AEDの使用

⊳ この節の問題を解く(3問・3枚)

  1. 電源を入れる(音声ガイダンスに従う)
  2. パッドを貼る(胸の右上と、左脇腹側)
  3. 解析中は誰も傷病者に触れない
  4. 指示があればショックボタンを押す(このときも全員が離れる)
  5. ショック直後に胸骨圧迫を再開する

特殊な状況への対応(頻出):

状況 対応
胸が濡れている 水分を拭き取ってからパッドを貼る
貼り薬がある はがして薬剤を拭き取ってから貼る
ペースメーカーの膨らみがある その部位を避けて貼る
胸毛が濃い 貼り直し用パッドで除毛するか、強く押し付けて密着させる
金属製アクセサリー パッドに触れなければ外す必要はない

AEDで最も間違えやすい点: ショックを与えたあと「効果を確認する」のではなく、すぐに胸骨圧迫を再開する。心拍の確認はAEDが次の解析で行います。


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4-5. 急性の傷害・体調不良への対応

⊳ この節の問題を解く(5問・8枚)

状況 一次対応 救急要請の目安 捻挫・打撲などの急性外傷 受傷直後 安静・冷却・圧迫・挙上(RICE)。冷却は15〜20分 近年は「保護と適切な負荷」を含めた考え方(POLICE)も用いる 変形・激痛・荷重不能 出血 手袋を着用し、清潔なガーゼで直接圧迫止血。挙上を併用 血液・体液はすべて感染性とみなして扱う(標準予防策) 止血できない大量出血 失神・立ちくらみ 仰臥位にし下肢を挙上。衣類をゆるめ、意識と呼吸を確認 回復後もすぐに運動を再開させない 意識が戻らない/胸痛を伴う 低血糖(糖尿病) 意識があれば速効性の糖質を約15g摂取し、15分後に再評価 意識がなければ何も口に入れない 意識障害・けいれん 胸痛・呼吸困難 直ちに運動を中止し安静。楽な姿勢をとらせ、観察を続ける 処方薬(吸入薬など)は本人に使用させる 改善しない/悪化する ⚠ 応急処置のあとは必ずインシデントレポートを作成する。日時・状況・観察された徴候・   行った処置・引き継ぎ先を、事実のみ客観的に記録する。 ⚠ 推測や自己弁護、診断名の記載はしない。記録は自分を守る証拠であり、書き換えは絶対に行わない。
図4-8 現場で遭遇しやすい5つの状況への一次対応と、救急要請の目安。

急性外傷(捻挫・打撲・肉離れ)

⊳ この節の問題を解く(1枚)

古典的には RICE(Rest 安静/Ice 冷却/Compression 圧迫/Elevation 挙上)。冷却は1回15〜20分を目安とし、皮膚に直接氷を当てず布などを介します。

近年は、完全な安静よりも早期の適切な負荷が回復を促すという考え方から POLICE(Protection 保護/Optimal Loading 適切な負荷/Ice/Compression/Elevation)も用いられます。

⚠️ 引っかけ注意 受傷直後に 温める・マッサージする・ストレッチする はいずれも誤り。炎症と出血を助長します。また、痛みを我慢して運動を継続させるのも誤りです。

医療機関への紹介が必要なサイン

  • 明らかな変形、骨の突出
  • 荷重できない・関節を動かせない
  • 激しい痛みが続く
  • 感覚の異常(しびれ)、脱力
  • 受傷部位の急速な腫脹

出血への対応

  1. 手袋を着用(自分の防護が先)
  2. 清潔なガーゼで直接圧迫止血
  3. 可能なら患部を心臓より高く挙上
  4. ガーゼが血液で満たされてもはがさず、上から重ねる(凝固した血栓をはがさないため)
  5. 使用した資材は感染性廃棄物として処理し、汚染面を消毒

失神・立ちくらみ

仰臥位にして下肢を挙上し、衣類をゆるめる。意識と呼吸を継続的に確認する。回復してもその日の運動は再開させません。意識が戻らない、胸痛を伴う 場合は救急要請。

低血糖(糖尿病のクライアント)

⊳ この節の問題を解く(1枚)

冷汗、ふるえ、動悸、空腹感、集中力低下、錯乱などが典型的な徴候です。

  • 意識があれば 速効性の糖質を約 15g 摂取させ、15分後に再評価(15-15ルール)
  • 意識がなければ 何も口に入れない(誤嚥の危険)。直ちに救急要請

⚠️ 引っかけ注意 「意識のない傷病者に糖分を含む飲料を飲ませる」は明確な誤りです。また、低血糖か高血糖か判断がつかない場合も、まず低血糖として対応する(低血糖のほうが短時間で生命に関わるため)のが一般的な原則です。

運動誘発性の呼吸困難・喘息発作

運動を直ちに中止し、楽な姿勢(座位で前傾)をとらせる。処方されている吸入薬は本人自身に使用させる(トレーナーが投与するのではない)。改善しなければ救急要請。


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4-6. 環境要因

⊳ この節の問題を解く(6問・9枚)

暑熱

重症度は連続的に進む。「意識・言動の異常」が出た時点で最重症として扱う 段階 主な徴候 対応 熱けいれん 最も軽い 運動中の筋のけいれん・痛み 大量発汗、体温はほぼ正常 運動中止、涼所で休息 水分+電解質(食塩水・経口補水液) 熱疲労 中等度 めまい・頭痛・吐き気・脱力 冷たく湿った皮膚、頻脈 体温は 40℃ 未満、意識は保たれる 直ちに中止し涼所へ。足を高くして臥位 衣類をゆるめ冷却、水分補給 改善しなければ医療機関へ 熱射病 生命の危機 中枢神経症状(錯乱・言動異常・意識障害) 深部体温 40℃ 超 発汗が止まることも/続くこともある 直ちに119番。全身を積極的に冷却する 冷水浸漬が最も有効。氷嚢は頸・腋窩・鼠径 「冷やしながら待つ」— 搬送を待って放置しない ⚠ 予防:暑熱順化に10〜14日/こまめな水分摂取/WBGTの確認/通気性のある服装/体重の減少率で脱水を把握する。
図4-4 暑熱障害の3段階。「意識・言動の異常」が現れた時点で熱射病=生命の危機として扱う。
段階 主な徴候 対応
熱けいれん 筋のけいれん・痛み、大量発汗、体温はほぼ正常 中止・涼所で休息、水分+電解質
熱疲労 めまい、頭痛、吐き気、脱力、冷たく湿った皮膚、体温40℃未満、意識は保たれる 中止・涼所・臥位で下肢挙上・冷却・水分補給。改善しなければ受診
熱射病 中枢神経症状(錯乱・言動異常・意識障害)、深部体温40℃超 直ちに救急要請+積極的冷却。冷水浸漬が最も有効

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熱疲労と熱射病を分ける決め手は「中枢神経症状の有無」です。「皮膚が乾いているかどうか」で判断させる設問がありますが、熱射病でも発汗が続くことがあるため、皮膚の状態だけでは判別できません。言動がおかしければ熱射病と考えます。

⚠️ 引っかけ注意 熱射病で「救急車を待つ間は安静にして待つ」は誤り。冷やしながら待つのが正解です。深部体温が高い時間が長いほど予後が悪化するため、現場での冷却開始が最優先されます。

予防:

  • 暑熱順化に10〜14日 かけて段階的に暴露する
  • WBGT(暑さ指数)を確認して運動の可否・強度を判断する
  • のどの渇きを待たずにこまめに水分摂取
  • 運動前後の体重の減少率で脱水の程度を把握する(2%以上の減少はパフォーマンス低下の目安)
  • 通気性のある淡色の服装。汗を吸わない素材で全身を覆うのは危険

📘 WBGT(湿球黒球温度)=気温だけでなく湿度と輻射熱を組み合わせた暑さの指標。湿度が高いと汗が蒸発せず体温が下がらないため、同じ気温でも危険度が上がります。「気温だけで判断してはいけない」というのが要点です。

寒冷

  • 低体温症:ふるえ、動作の緩慢、言語不明瞭、判断力低下。重症化するとふるえが止まる(これは悪化のサイン)
  • 凍傷:末端(手指、足趾、耳、鼻)の感覚消失と蒼白
  • 対応:濡れた衣服を脱がせ、乾いた衣類と毛布で保温し、暖かい場所へ。急激に熱源で温めない
  • 予防:重ね着(レイヤリング) で調節する。汗で濡れた衣服はすぐに着替える。頭部・頸部からの熱喪失が大きい

高地

標高が上がると気圧が下がり、酸素分圧が低下します。最大酸素摂取量が低下し、同じ運動が相対的に高強度になります。

  • 到達直後は強度を下げ、数日〜数週間かけて順化
  • 脱水が進みやすい(乾燥した空気と換気量の増加)ため水分補給を増やす
  • 高山病(頭痛、吐き気、めまい、不眠)が出たら高度を下げる

大気汚染

オゾンや粒子状物質の濃度が高い日は、屋外運動を避けるか、濃度が低い早朝に移す、屋内へ変更する、といった対応をとります。喘息や心血管疾患のあるクライアントでは特に配慮が必要です。


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4-7. 法的諸問題

⊳ この節の問題を解く(4問・6枚)

この節は、用語をそのまま覚えることが得点に直結します。

過失(ネグリジェンス)の4要件

過失(negligence)は 4つすべてがそろって初めて成立する。1つでも欠ければ成立しない 注意義務がある トレーナーとクライアント という関係が成立している = duty of care 義務に違反した 標準的な注意基準を 下回る行為・不作為 = breach 損害が生じた 実際に傷害・損失が 発生している = damage 因果関係がある その違反が損害を 引き起こしたといえる = causation 標準的な注意基準とは 同等の資格・経験をもつ専門家が、同じ状況で 通常行うであろう水準の行為。 個人の善意ではなく、業界の標準が基準になる 違反の典型例 スクリーニングを行わなかった/危険な器具を 放置した/スポットを付けずに高重量を扱わせた/ 業務範囲を超えて診断・治療的助言をした ⚠ 免責同意書(waiver)に署名があっても、重過失や業務範囲逸脱まで免責されるわけではない。書類は防御の一部にすぎない。
図4-5 過失が成立する4つの要件。①〜④のすべてが揃って初めて成立し、1つでも欠ければ成立しない。

📘 過失(negligence)=ある状況で通常求められる注意を怠り、その結果として他者に損害を与えること。故意ではない点が特徴です。

要件 内容
① 注意義務の存在(duty) トレーナーとクライアントという関係が成立しており、安全に配慮する義務がある
② 義務違反(breach) 標準的な注意基準を下回る行為、または行うべきことを行わなかった(不作為)
③ 損害の発生(damage) 実際に傷害・損失が生じている
④ 因果関係(causation) その義務違反が損害を引き起こしたといえる

この4要件は頻出。「4つすべてが揃って初めて成立する」という点が問われます。「損害は生じたが義務違反はなかった」「義務違反はあったが損害はなかった」という場合、過失は成立しません。

標準的な注意基準

📘 標準的な注意基準(standard of care)=同等の資格・経験をもつ専門家が、同じ状況で通常行うであろう水準の行為。個人の善意や努力ではなく、業界の標準が基準になります。だからこそ、認定資格・ガイドライン・専門団体の推奨に沿って行動することが防御になります。

違反とされやすい典型例:

  • 健康状態のスクリーニングを行わずに運動を開始させた
  • 破損した器具を放置した/使用を許した
  • スポッターが必要な場面で付けなかった
  • クライアントの能力を超える負荷・種目を課した
  • 業務範囲を超えて診断的・治療的な助言をした
  • 緊急時に適切な対応をとれなかった(CPR-AED認定の失効を含む)
  • 記録を残していなかった

書類とその意味

書類 目的 注意点
インフォームドコンセント(説明と同意) 運動に伴うリスクと内容を説明し、理解したうえで参加することの確認 説明が不十分だと無効になりうる。質問の機会を与える
免責同意書(waiver / release) 通常の過失について、施設・トレーナーの責任を免除する合意 重過失や故意、業務範囲の逸脱は免責されない。未成年では効力が限定される
危険引受(assumption of risk) 活動固有のリスクを理解し、自らの意思で引き受けたという合意 リスクを具体的に列挙しておくことが重要
健康状態質問票・メディカルクリアランス スクリーニングの記録 領域1の内容とつながる。実施しなかったこと自体が過失になりうる
インシデントレポート 事故・応急処置の記録 事実のみを客観的に。推測・診断名・自己弁護は書かない

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⚠️ 引っかけ注意 「免責同意書に署名させておけば、どんな事故でも責任を問われない」は明確な誤りです。免責同意書が守るのは通常の過失の範囲までで、器具の放置や資格外の行為といった重大な違反は免責されません。書類は防御の一部にすぎない、と覚えてください。

記録の保管

⊳ この節の問題を解く(1問・2枚)

  • 同意書、スクリーニング記録、プログラム、セッション記録、インシデントレポートを保管する
  • 保管期間は法域や施設方針によりますが、訴訟が起こりうる期間を考慮して長めに設定するのが原則
  • 未成年の記録は、成人になってからさらに一定期間保管することが求められる場合がある
  • 個人の健康情報は施錠または暗号化して管理し、本人の同意なく第三者に開示しない(守秘義務)

業務範囲(スコープ・オブ・プラクティス)

⊳ この節の問題を解く(2問・3枚)

業務範囲(スコープ・オブ・プラクティス)の逸脱は、最も多い法的リスクのひとつ ◯ トレーナーが行うこと ・健康状態のスクリーニングと層別化 ・体力測定と結果の説明 ・プログラムの作成と実施指導 ・エクササイズテクニックの指導と修正 ・公的機関のガイドラインに基づく  一般的な栄養情報の提供 ・応急処置と救急要請 ・必要に応じた他職種への紹介 × トレーナーが行わないこと ・疾患や傷害の診断 ・治療、リハビリテーションの処方 ・個別の食事プラン(献立)の作成 ・サプリメントや薬の処方・推奨 ・薬の中止や変更の助言 ・心理療法・カウンセリング ・徒手療法、関節の矯正 ・検査値の解釈にもとづく医学的判断 紹介先の目安:診断・治療 → 医師/リハビリ → 理学療法士/個別の食事療法 → 管理栄養士/心理的問題 → 臨床心理士・医師 ⚠ 「よかれと思って」の助言でも、範囲を超えれば注意義務違反となりうる。判断に迷ったら「紹介する」が最も安全な選択。
図4-6 トレーナーが行うことと、行わないこと。境界を越えた助言は、善意であっても注意義務違反となりうる。

📘 業務範囲(scope of practice)=その資格で行うことが認められている業務の範囲。範囲を超えた行為は、たとえ結果が良くても、また善意であっても、法的責任の対象になります。

◯ 行うこと × 行わないこと
スクリーニングとリスク層別化 疾患・傷害の診断
体力測定と結果の説明 治療・リハビリテーションの処方
プログラムの作成と実施指導 個別の食事プラン(献立)の作成
テクニックの指導・修正 サプリメント・薬の処方や推奨
公的ガイドラインに基づく一般的な栄養情報の提供 薬の中止・変更の助言
応急処置と救急要請 心理療法・カウンセリング
他職種への紹介 徒手療法、関節の矯正

紹介先の目安:

相談内容 紹介先
診断・治療・服薬 医師
傷害後のリハビリテーション 理学療法士
個別の食事療法、疾患に応じた栄養管理 管理栄養士
摂食障害の疑い、うつ、心理的問題 医師・臨床心理士

判断に迷ったら「紹介する」が常に安全な選択肢です。試験でも、選択肢に「適切な専門職へ紹介する」がある場合、それが正解であることが非常に多い。


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4-8. リスクマネジメント

⊳ この節の問題を解く(2問・3枚)

「起こる確率」と「起きたときの重大さ」で対応を決める 重大さ 大 重大さ 小 発生頻度 低 発生頻度 高 移転(transfer) めったに起きないが起きれば重大 → 賠償責任保険に加入して   経済的負担を移す 回避(avoidance) 頻度も重大さも高い → その活動・種目・器具を   そもそも行わない/撤去する 保有(retention) 頻度も影響も小さい → 自分で受け止める  (軽微な擦り傷など) 低減(reduction) よく起きるが影響は限定的 → 点検、掲示、指導、清掃で   発生確率を下げる 手順 ① 危険を洗い出す ② 頻度と重大さで   評価する ③ 4戦略から選ぶ ④ 文書化して   全員に周知する ⑤ 定期的に見直す
図4-7 リスクマネジメントの4戦略。発生頻度と重大さの組み合わせで対応が決まる。

4つの戦略

戦略 いつ使うか
回避(avoidance) 頻度も重大さも高い 危険な種目・器具を提供しない、撤去する
移転(transfer) 頻度は低いが重大 賠償責任保険に加入して経済的負担を移す
低減(reduction) 頻度は高いが影響は限定的 点検、掲示、指導、清掃で発生確率を下げる
保有(retention) 頻度も影響も小さい 軽微な擦り傷などは自ら受け止める

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進め方

  1. 危険(ハザード)を洗い出す
  2. 発生頻度と重大さで評価する
  3. 4戦略のいずれかを選ぶ
  4. 文書化し、全スタッフに周知する
  5. 定期的に見直す

📘 賠償責任保険(professional liability insurance)=業務上の過失により損害賠償を求められた場合に備える保険。個人で活動するトレーナーにとっては必須とされます。施設の保険が個人のトレーナーまでカバーしているとは限らない点に注意。


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4-9. 職業倫理と専門職としての行動

⊳ この節の問題を解く(2問・2枚)

  • 守秘義務 — クライアントの健康情報、測定結果、相談内容を第三者に漏らさない。SNSへの投稿、写真の使用は必ず事前に書面で同意を得る
  • 専門的な境界 — 私的な関係との線引きを保つ。身体に触れる指導を行う際は、目的を説明して事前に同意を得る
  • 公平性 — 年齢、性別、体格、障害、人種、性的指向などを理由に扱いを変えない
  • 誠実な表示 — 保有していない資格を名乗らない、効果を誇大に表現しない、根拠のない商品を販売しない
  • 継続教育 — 認定資格の維持要件(継続教育単位、CPR-AED認定の更新)を満たし続ける
  • 利益相反の開示 — 特定の商品を販売して利益を得る立場にある場合は、その関係を開示する

⚠️ 引っかけ注意 「クライアントの劇的な成果を、本人の名前を伏せて写真つきでSNSに投稿する」は、名前を伏せていても同意なしでは不可です。身体の写真は個人が特定されうる情報として扱います。


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⚡ この章の暗記必須ボックス

施設の数値

  • 室温 20〜22℃/湿度 60%未満/換気 毎時8〜12回
  • 天井高 3.6〜4.2m/通路幅 0.9m以上(主通路1.2m)
  • フリーウェイト間隔 0.9m以上/有酸素性機器 0.5〜0.9m
  • プラットフォーム 2.4×2.4m/鏡は床から50cm以上/騒音90dB未満
  • 1人あたり面積 約9〜10m²

胸骨圧迫

  • 速さ 100〜120回/分/深さ 約5cm(6cm超えない)
  • 圧迫:換気 = 30:2/1〜2分ごとに交代/中断は最小限
  • 判断に迷ったら心停止として扱い、直ちに圧迫

AED

  • 解析中とショック時は誰も触れない
  • ショック直後に胸骨圧迫を再開
  • 濡れている→拭く/貼り薬→はがして拭く/ペースメーカー→避けて貼る

暑熱障害

  • 熱けいれん → 熱疲労 → 熱射病(深部体温40℃超+中枢神経症状
  • 熱射病は救急要請+冷水浸漬。冷やしながら待つ
  • 暑熱順化に10〜14日

低血糖

  • 意識あり → 糖質15g15分後再評価(15-15ルール)
  • 意識なし → 何も口に入れない+救急要請

過失の4要件

  • ①注意義務 ②義務違反 ③損害 ④因果関係 — 4つすべて揃って成立

リスクマネジメント4戦略

  • 回避/移転(保険)/低減/保有

業務範囲

  • 診断・治療・個別の献立作成・サプリの処方 → 行わない
  • 迷ったら紹介する

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以上で4領域すべての内容が揃いました。

次は、どの領域にも属さないものの すべての領域の前提となる知識 — 解剖学・生理学・バイオメカニクス・栄養学・心理学の基礎です。ハンドブックでも、テキストの1〜8章は「特定の領域に属さない前提知識」として位置づけられています。ここが曖昧なままだと、領域2・3の設問で選択肢の意味そのものが読み取れません。

その後、数値暗記シートで全領域の数字を一枚に集約し、最後に模擬試験3セット(各155問・3時間)へ進みます。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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