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CHAPTER 5 基礎知識① 読む目安 約10分 / ⚡暗記ボックス 6

基礎知識①|解剖学・運動生理学・トレーニング適応

出題比率:直接の配点はなし(ただし全領域の前提知識)


この章の位置づけ

『NSCA資格認定ハンドブック』では、テキストの各章と試験領域の対応が示されています。そこで 解剖生理学(1・2章)、トレーニングに対する適応(3・5・6章)、バイオメカニクス(4章) は、どの領域にも属さない前提知識として位置づけられています。

つまり、この章から直接出題されるわけではありません。にもかかわらず、この章が最も差がつきます。

理由は単純です。領域2や領域3の設問は、こう聞いてきます。

「高強度・短時間の運動で主に用いられるエネルギー供給機構はどれか」 「12週間の有酸素性トレーニングによって期待される適応として正しいものはどれか」

これらは形式上は領域2の設問ですが、答えを出すのに必要な知識はすべてこの章の内容です。基礎が抜けていると、選択肢の日本語そのものが読めません。

押さえるテーマ どこで効くか
解剖学的姿位・運動面・方向用語 領域3(機能解剖)/領域1(姿勢評価)
筋の構造と収縮のしくみ 領域3全般
筋線維タイプとサイズの原理 領域2(負荷設定)/領域3
エネルギー供給機構 領域2(インターバル、休息時間)
心血管・呼吸の急性反応と慢性適応 領域1(安静時データ)/領域2
トレーニング適応の時間経過 領域2(プログラム進行)/領域4(傷害予防)

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5-1. 解剖学の共通言語

解剖学的姿位

⊳ この節の問題を解く(1枚)

すべての解剖学用語は、ひとつの基準姿勢をもとに決められています。

📘 解剖学的姿位=直立し、顔と足のつま先を前に向け、腕を体側に垂らし、手のひらを前に向けた姿勢。「手のひらを前に向ける」という点が意外に忘れられます。この姿勢を基準にするからこそ、腕がどんな向きにあっても「橈骨は外側」と一意に言えます。

立位・つま先前向き・手掌を前に向けた姿勢が「解剖学的姿位」。すべての用語はこの姿勢を基準に決まる 3つの運動面と主な動き 矢状面 身体を左右に分ける 屈曲・伸展(カール、スクワット) 前額面 身体を前後に分ける 外転・内転(ラテラルレイズ) 水平面 身体を上下に分ける 回旋(体幹のツイスト) 方向を表す用語 上(頭側)/下(尾側) 前(腹側)/後(背側) 内側=正中に近い 外側=正中から遠い 近位=体幹に近い(肩は肘の近位) 遠位=体幹から遠い(手は肘の遠位) 浅=体表に近い/深=内部 同側=同じ側/対側=反対側 ⚡ 「近位・遠位」は必ず基準を伴って使う。肘は「肩に対して遠位」であり「手首に対して近位」— どちらか一方ではない。
図5-1 解剖学的姿位を基準とした3つの運動面と、方向を表す用語。屈曲・伸展は矢状面、外転・内転は前額面、回旋は水平面で起こる。

3つの運動面

⊳ この節の問題を解く(1枚)

身体をどう分けるか 主な動き 種目の例
矢状面 左右に分ける 屈曲・伸展 スクワット、カール、ランジ
前額面(冠状面) 前後に分ける 外転・内転、側屈 ラテラルレイズ、サイドランジ
水平面(横断面) 上下に分ける 回旋、水平内転・外転 体幹のツイスト、ケーブルの水平プレス

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覚え方: 「前に進む動きは矢状面、横に開く動きは前額面、ねじる動きは水平面」。日常動作の大半は矢状面で起こるため、プログラムでは前額面・水平面の動きが不足しがちだ、という論点にもつながります。

方向を表す用語

用語 意味
上(頭側)/下(尾側) 頭に近い/足に近い 胸は腹の上方
前(腹側)/後(背側) 身体の前面/後面 大胸筋は前面、広背筋は後面
内側/外側 正中線に近い/遠い 母趾は内側、小趾は外側
近位/遠位 体幹に近い/遠い 肩は肘の近位、手首は肘の遠位
浅/深 体表に近い/内部 腹直筋は浅層、腹横筋は深層

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⚠️ 引っかけ注意 「近位・遠位」は必ず基準を伴って使います。肘は「肩に対して遠位」であり、同時に「手首に対して近位」です。「肘は遠位である」という単独の記述は意味をなしません。

骨と関節

  • 成人の骨は 206個軸骨格(80個:頭蓋、脊柱、胸郭)付属骨格(126個:上肢帯・下肢帯と四肢) に分かれます
  • 脊柱は 頸椎7・胸椎12・腰椎5・仙椎5(癒合)・尾椎4(癒合)

関節の分類:

分類 可動性
不動関節(線維性) ほぼ動かない 頭蓋の縫合
半関節(軟骨性) わずかに動く 椎間板、恥骨結合
可動関節(滑膜性) よく動く 膝、肩、股関節

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滑膜関節の代表:

動く方向
球関節 3面すべて 肩関節、股関節
蝶番関節 1面(屈伸のみ) 肘関節、指節間関節
車軸関節 回旋 環軸関節、橈尺関節
顆状関節 2面 手関節、中手指節関節
鞍関節 2面 母指の手根中手関節
平面関節 滑り 手根骨間、椎間関節

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肩関節と股関節はどちらも球関節ですが、肩は可動性が大きく安定性が低い、股関節は可動性が小さく安定性が高い、という対比で覚えます。この違いが、そのまま「肩は脱臼しやすい」「股関節は可動域制限が起こりやすい」という現場の話につながります。


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5-2. 骨格筋の構造と収縮

筋は「入れ子」構造。外側から順に、包む膜の名前が変わる ① 筋 筋外膜が全体を包む ② 筋束 筋周膜が束を包む ③ 筋線維 筋内膜が1本を包む=細胞 ④ 筋原線維 線維の中に多数並ぶ ⑤ サルコメア 収縮の最小単位(Z線間) 滑走説(収縮のしくみ) ミオシン(太いフィラメント)の頭部がアクチン(細い フィラメント)をたぐり寄せ、Z線どうしが近づく。 フィラメント自体は短くならない — 滑り込むだけ 収縮の引き金 運動神経の興奮 → 神経筋接合部でアセチルコリン放出 → 筋小胞体から Ca²⁺ が放出 → トロポニンに結合し 結合部位が露出 → ATPを使ってミオシン頭部が動く ⚡ 「筋外膜 → 筋周膜 → 筋内膜」の順(外→内)。筋線維=筋細胞1本、という対応も頻出。
図5-2 骨格筋の階層構造。外側の膜から順に筋外膜・筋周膜・筋内膜。収縮の最小単位はサルコメア。

入れ子構造

筋 →(筋外膜)→ 筋束 →(筋周膜)→ 筋線維 →(筋内膜)→ 筋原線維 → サルコメア

📘 筋線維=筋細胞1本のこと。細長い多核の細胞で、その中に筋原線維が多数詰まっています。「筋線維=筋細胞」という対応は試験でそのまま問われます。

📘 サルコメア(筋節)=Z線とZ線の間の区画で、筋収縮の最小単位。この中でアクチン(細いフィラメント)とミオシン(太いフィラメント)が重なり合っています。

滑走説(収縮のしくみ)

⊳ この節の問題を解く(1問・2枚)

  1. 運動神経が興奮し、神経筋接合部アセチルコリン が放出される
  2. 筋線維の膜が興奮し、筋小胞体からカルシウムイオン(Ca²⁺) が放出される
  3. Ca²⁺ が トロポニン に結合し、トロポミオシン がずれてアクチン上の結合部位が露出する
  4. ミオシン頭部がアクチンに結合し、ATPを分解しながらアクチンをたぐり寄せる
  5. Z線どうしが近づき、サルコメアが短くなる = 筋が短縮する

⚠️ 引っかけ注意 アクチンとミオシンのフィラメント自体は短くなりません。 互いに滑り込むことで、サルコメアの「長さ」が短くなるだけです。「収縮=フィラメントが縮む」は誤りです。

運動単位とサイズの原理

📘 運動単位=1本の運動神経と、それが支配するすべての筋線維のまとまり。1つの運動単位に含まれる筋線維は、すべて同じタイプです。細かい動きが必要な部位(眼球、手指)では1つの運動単位が支配する線維数が少なく、大きな力を出す部位(大腿、殿部)では多くなります。

📘 サイズの原理=必要な力が小さいときは小さい運動単位(タイプⅠ)から順に動員され、力が必要になるにつれて大きい運動単位が追加されるという原則。

この原理が意味するのは、「タイプⅡ線維を動員したいなら、高い負荷か、疲労した状態での全力発揮が必要」ということです。軽い重量をだらだら挙げていても、速筋線維には届きません。


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5-3. 筋線維タイプ

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

特性 タイプⅠ(遅筋) タイプⅡa タイプⅡx(速筋) 収縮速度遅い速い最も速い 発揮できる力小さい大きい最も大きい 疲労耐性高い(疲れにくい)中程度低い(すぐ疲れる) 主なエネルギー酸化(有酸素)酸化+解糖解糖(無酸素) ミトコンドリア・毛細血管多い中程度少ない 得意な場面姿勢保持・長距離中距離・反復的な高強度単発の最大パワー サイズの原理(運動単位の動員順序) 必要な力が小さいときは、小さい(タイプⅠの)運動単位から動員される。力が必要になるほど、より大きい運動単位が 追加で動員される。= タイプⅡを動員するには「高い負荷」か「疲労した状態での全力発揮」が要る、という帰結になる。 Ⅰ → Ⅱa → Ⅱx
図5-3 筋線維タイプの比較と、サイズの原理による動員順序。
特性 タイプⅠ(遅筋) タイプⅡa タイプⅡx(速筋)
収縮速度 遅い 速い 最も速い
発揮できる力 小さい 大きい 最も大きい
疲労耐性 高い 中程度 低い
主なエネルギー 酸化(有酸素) 酸化+解糖 解糖(無酸素)
ミトコンドリア・毛細血管 多い 中程度 少ない
得意な場面 姿勢保持、長距離 中距離、反復的な高強度 単発の最大パワー

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トレーニングによる変化:

  • 持久系トレーニング → ⅡxがⅡaへ移行する方向。酸化能力が高まる
  • レジスタンストレーニング → こちらも ⅡxがⅡaへ移行する(Ⅱxは「使われていない予備」に近い性質)
  • タイプⅠ ⇄ タイプⅡ の相互変換は、通常のトレーニングでは起こらないとされる

⚠️ 引っかけ注意 「トレーニングによって遅筋線維が速筋線維に変わる」は誤りです。起こるのは主に Ⅱx → Ⅱa というタイプⅡ内部の移行です。


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5-4. エネルギー供給機構

⊳ この節の問題を解く(3問)

3つは「切り替わる」のではなく、常に同時に働き、時間とともに主役が移る 0秒 6秒 30秒 2分 それ以上 ホスファゲン機構 解糖系(速い解糖) 酸化機構(有酸素) ホスファゲン機構 燃料 ATP と クレアチンリン酸 酸素 不要 速さ 最速/量は最小 例 1RM挙上、短距離スタート 解糖系 燃料 グルコース・グリコーゲン 酸素 不要 速さ 中/副産物に乳酸 例 400m走、高回数セット 酸化機構 燃料 糖質・脂質(+少量の蛋白) 酸素 必要 速さ 最も遅い/量は最大 例 ジョギング、長距離
図5-4 3つのエネルギー供給機構と、それぞれが主役になる時間帯。3つは同時に働き、時間とともに主役が移る。

📘 ATP(アデノシン三リン酸)=筋収縮を含むあらゆる活動の直接のエネルギー源。ただし筋に蓄えられている量はごくわずかで、数秒分しかありません。だからATPを作り続ける3つの仕組みが必要になります。

機構 主な燃料 酸素 供給の速さ 供給できる総量 主役の時間帯
ホスファゲン機構 ATP、クレアチンリン酸 不要 最速 最小 〜約6秒
解糖系(速い解糖) グルコース、グリコーゲン 不要 約6秒〜2分
酸化機構 糖質、脂質、少量のタンパク質 必要 最も遅い 最大 約2分以上

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具体例で対応させる:

運動 主な機構
1RMのスクワット、砲丸投げ、5m ダッシュ ホスファゲン
400m走、高回数のセット、1分間のサーキット 解糖系
ジョギング、サイクリング、マラソン 酸化機構

⚠️ 引っかけ注意 3つの機構は「切り替わる」のではなく、常に同時に働いています。 変わるのは「どれが主役か」という寄与の割合だけです。「30秒までは解糖系のみが働く」といった記述は誤りです。

休息時間との結びつき: ホスファゲンの回復には2〜5分かかります。だから筋力・パワー目的では長い休息をとる。逆に筋持久力目的で30秒以下の休息にすると、ホスファゲンが回復しないまま次のセットに入るため、解糖系への依存が高まる — これが領域2の「休息時間」の設問の根拠です。

乳酸について:

高強度運動では解糖の速度が酸化の処理能力を上回り、乳酸が蓄積します。ただし、

  • 乳酸そのものが「疲労の原因物質」であるという単純な説明は現在では不正確とされます
  • 乳酸は再びエネルギー源として利用される(心筋や遅筋線維、肝臓での糖新生)
  • 運動後の乳酸は1時間程度で除去されます。したがって 24〜72時間後にピークを迎える遅発性筋痛(DOMS)の原因ではありません

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5-5. 心血管系・呼吸系の反応

基本の関係式

📘 心拍出量(cardiac output)=1分間に心臓が送り出す血液量。 心拍出量 = 心拍数 × 1回拍出量

📘 最大酸素摂取量(VO₂max)=1分間に体内に取り込んで利用できる酸素の最大量。持久性能力の代表的な指標で、 VO₂max = 最大心拍出量 × 動静脈酸素較差(フィックの原理) つまり「どれだけ送り出せるか」×「どれだけ取り出せるか」で決まります。

運動中の急性反応(動的・有酸素性運動)

指標 変化
心拍数 上昇(強度に比例)
1回拍出量 上昇(ただし最大酸素摂取量の40〜60%付近で頭打ちになる)
心拍出量 上昇
収縮期血圧 上昇
拡張期血圧 ほぼ変化しない、またはわずかに低下
血流配分 活動筋へ再配分(内臓への血流は減少)
換気量 上昇(呼吸数と1回換気量の両方)
動静脈酸素較差 拡大

⚠️ 引っかけ注意 動的運動で拡張期血圧が大きく上昇するのは正常な反応ではありません。 運動中に拡張期血圧が明らかに上昇する場合は、運動を中止する基準のひとつとされます。一方、レジスタンストレーニング(等尺性を含む静的な要素が強い運動)では、収縮期・拡張期ともに大きく上昇します。この違いが問われます。

慢性適応

⊳ この節の問題を解く(1問・2枚)

有酸素性トレーニングの慢性適応 最大酸素摂取量 1回拍出量(安静時・運動時とも) 毛細血管密度 ミトコンドリアの数と大きさ 酸化系酵素の活性 動静脈酸素較差 安静時心拍数・同一負荷での心拍数 安静時血圧(軽度高血圧者で顕著) レジスタンストレーニングの慢性適応 筋の横断面積(筋肥大) 最大筋力・パワー 運動単位の動員・発火頻度(神経適応) 腱・靱帯・結合組織の強度 骨密度(負荷のかかった部位で) 安静時代謝率(除脂肪量の増加に伴う) → 最大酸素摂取量は大きくは変わらない → 毛細血管密度は筋肥大により相対的に低下しうる ⚡ 開始からの順序:はじめの4〜6週間の筋力向上は主に「神経適応」(動員の改善)による。目に見える筋肥大はその後に現れる。 ⚡ 骨・腱・靱帯の適応は筋より遅い。だからこそ、筋力がついた実感のあとに負荷を上げすぎると傷害が起こる。
図5-5 有酸素性トレーニングとレジスタンストレーニングの慢性適応の対比。矢印の向きが逆になるものに注意。

有酸素性トレーニング:

上がるもの ↑ 下がるもの ↓
最大酸素摂取量 安静時心拍数
1回拍出量(安静時・運動時とも) 同一負荷での心拍数
毛細血管密度 安静時血圧(軽度高血圧者で顕著)
ミトコンドリアの数と大きさ 体脂肪率
酸化系酵素の活性
動静脈酸素較差

最も出やすいのは「安静時心拍数の低下」です。1回拍出量が増えるため、同じ量の血液を送るのに必要な拍数が減る、という因果で覚えます。

レジスタンストレーニング:

  • 筋の横断面積の増加(筋肥大)、最大筋力・パワーの向上
  • 運動単位の動員と発火頻度の改善(神経適応)
  • 腱・靱帯・結合組織の強度向上、骨密度の増加
  • 除脂肪量の増加に伴う安静時代謝率の上昇
  • 最大酸素摂取量は大きくは変わらない

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5-6. 適応の時間経過

ここは領域2(プログラムの進行)と領域4(傷害予防)の両方に効く、重要な視点です。

組織・要素 適応の速さ
神経(動員の改善) 最も速い。開始から数週間
筋(筋肥大) 中程度。おおむね6〜8週間以降に明確化
腱・靱帯・結合組織 遅い
最も遅い。数か月単位

これが「なぜ急に負荷を上げてはいけないか」の答えです。開始から4〜6週間で挙上重量は目に見えて伸びますが、その大半は神経適応であって、腱や骨はまだ追いついていません。「力がついた実感」に合わせて負荷を上げると、追いついていない組織から壊れます。2 for 2 ルールのような漸進の枠組みは、この時間差を制御するための仕組みです。

骨への適応

📘 最小有効ひずみ=骨の形成が促されるために必要な、最低限の力学的な刺激の水準。日常生活の負荷を明らかに上回る刺激でなければ、骨は強くなりません。

骨は 負荷がかかった部位に特異的に 適応します(ウォルフの法則)。したがって骨密度の向上を狙うなら、

  • 荷重(体重が乗る)種目を含める
  • 多関節・高負荷の種目が有効
  • 水泳や自転車のような非荷重運動は、心肺には有効でも骨への刺激は小さい

ディトレーニング(トレーニング中止)

⊳ この節の問題を解く(1枚)

  • 有酸素性能力は比較的速く低下する(数週間で明確に)
  • 筋力は比較的保たれやすいが、数週間から低下が始まる
  • 神経適応の部分は残りやすいため、再開時の戻りは初回より速い(マッスルメモリーと呼ばれる現象)

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5-7. 固有受容器 — 筋の中のセンサー

どちらも筋のなかにある「センサー」。感知するものと、その結果が正反対になる 筋紡錘 場所 筋腹の中(筋線維と平行) 感知 筋の「長さ」と伸ばされる速さ 結果 その筋を収縮させる(伸張反射) 例 膝蓋腱反射、急に伸ばされた筋が縮む ゴルジ腱器官 場所 筋と腱の移行部 感知 筋が発揮している「張力」 結果 その筋を弛緩させる(自原抑制) 例 過大な張力から筋・腱を守る安全装置 ⚡ 対比で覚える:筋紡錘=長さを感知して「縮ませる」/ゴルジ腱器官=張力を感知して「ゆるめる」。 静的ストレッチを10〜30秒保持すると伸張反射が弱まり、ゴルジ腱器官の働きも加わって筋がゆるむ、と説明される。
図5-6 筋紡錘とゴルジ腱器官。感知するものと結果が正反対になる点が要点。
筋紡錘 ゴルジ腱器官
場所 筋腹の中(筋線維と平行) 筋と腱の移行部
感知するもの 筋の長さと伸ばされる速さ 筋が発揮している張力
結果 その筋を収縮させる(伸張反射) その筋を弛緩させる(自原抑制)
役割 急な伸張から筋を守る 過大な張力から筋・腱を守る

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完全に対比で覚えます。筋紡錘=長さを感知して縮ませる。ゴルジ腱器官=張力を感知してゆるめる

応用:

  • 動的ストレッチ/反動をつけたストレッチ は伸張反射を引き起こすため、柔軟性の獲得には不向き(ウォームアップには有用)
  • 静的ストレッチを10〜30秒保持すると伸張反射が弱まり、筋がゆるむ
  • SSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル) では、エキセントリック局面での急な伸張が伸張反射と弾性エネルギーの蓄積を生み、続くコンセントリック局面の出力を高めます(領域2のプライオメトリクスにつながる)

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⚡ この章の暗記必須ボックス

解剖の基本

  • 解剖学的姿位 = 直立・つま先前向き・手のひらを前
  • 矢状面=屈曲/伸展/前額面=外転/内転/水平面=回旋
  • 骨は 206個(軸骨格80+付属骨格126)
  • 肩・股関節=球関節/肘=蝶番関節

筋の構造

  • 筋外膜 → 筋周膜 → 筋内膜(外→内)
  • 筋線維=筋細胞1本/サルコメア=収縮の最小単位
  • 滑走説:フィラメントは短くならない、滑り込むだけ
  • 神経伝達物質はアセチルコリン、収縮の引き金は Ca²⁺

筋線維タイプ

  • Ⅰ=遅い・小さい力・疲れにくい・酸化的
  • Ⅱx=速い・大きい力・疲れやすい・解糖的
  • 変化は主に Ⅱx → ⅡaⅠ⇄Ⅱの変換は起こらない
  • サイズの原理:小さい運動単位から動員

エネルギー機構

  • ホスファゲン(〜6秒)/解糖系(6秒〜2分)/酸化(2分〜)
  • ホスファゲンの回復に 2〜5分
  • 3つは同時に働く。乳酸はDOMSの原因ではない

循環・呼吸

  • 心拍出量 = 心拍数 × 1回拍出量
  • VO₂max = 最大心拍出量 × 動静脈酸素較差
  • 動的運動:収縮期↑・拡張期はほぼ不変
  • 有酸素の適応:安静時心拍数↓/1回拍出量↑/毛細血管↑/ミトコンドリア↑

適応の速さ

  • 神経 > 筋 > 腱・靱帯 > (骨が最も遅い)

固有受容器

  • 筋紡錘=長さ → 収縮(伸張反射)
  • ゴルジ腱器官=張力 → 弛緩(自原抑制)

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次章へ

次は残る前提知識 — 栄養学(テキスト7章)と心理学(8章) です。栄養は計算問題の出どころ、心理学は「クライアントが続かない」という現場最大の問題への答えになります。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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