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CHAPTER 6 基礎知識② 読む目安 約20分 / ⚡暗記ボックス 3

基礎知識②|栄養学とトレーニング心理学

出題比率:直接の配点はなし(ただし全領域の前提知識)


この章の位置づけ

前章と同じく、栄養学(テキスト7章)と心理学(8章) も、ハンドブック上はどの試験領域にも属さない「前提知識」です。しかし実際の設問では、次のような形で必ず顔を出します。

「体重70kgの持久系アスリートに推奨されるタンパク質摂取量として適切なものはどれか」 「運動を始める意思がまだないクライアントに対する最初の働きかけとして最も適切なものはどれか」

前者は領域2(プログラムプランニング)、後者は領域1(面談と評価)の設問として出題されますが、答えを決めているのはこの章の知識です。

そしてこの章には、他の章にない特徴が2つあります。

1つめ:栄養は計算問題の主要な出どころ。 三大栄養素のkcal、体脂肪1kgのkcal、体重あたりのg数 — 使う数字は少なく、しかも毎回同じです。覚えれば確実に取れる領域です。

2つめ:心理学は「業務範囲」と直結する。 パーソナルトレーナーは栄養士でもカウンセラーでもありません。どこまでが自分の仕事で、どこからが他職種か — この線引きが、栄養と心理の両方で問われます(領域4にも直結)。

押さえるテーマ どこで効くか
三大栄養素のエネルギー量と摂取目安 計算問題/領域2
エネルギーバランスと体重管理 計算問題/領域1(目標設定)
水分補給のガイドライン 領域2/領域4(熱中症予防)
栄養に関する業務範囲 領域4(法的諸問題)
行動変容ステージモデル 領域1(面談)/領域2(継続)
自己効力感と目標設定 領域1・領域2
コミュニケーション技術 領域1全般

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6-1. エネルギーバランス — すべての体重管理の土台

体重が増えるか減るかを決めるのは、たったひとつの引き算です。

摂取エネルギー − 消費エネルギー = エネルギーバランス

  • プラス(摂取>消費)→ 体重増加
  • マイナス(摂取<消費)→ 体重減少
  • ゼロ → 体重維持

「炭水化物を食べたから太る」「夜遅く食べたから太る」といった説明が世間には溢れていますが、試験で問われる原則はこの引き算だけです。

消費エネルギーの内訳

📘 総エネルギー消費量(TDEE)=1日に消費するエネルギーの合計。次の3つの合計として理解します。

構成要素 割合の目安 内容
基礎代謝量(BMR) 約60〜75% 生命維持に必要な最低限のエネルギー。最大の割合を占める
食事誘発性熱産生(TEF) 約10% 消化・吸収に使われるエネルギー
身体活動によるエネルギー消費 約15〜30% 運動+日常活動。個人差が最も大きい

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⚠️ 引っかけ注意: 「1日の消費エネルギーのうち最も大きい割合を占めるのは運動である」は誤り。最も大きいのは基礎代謝量です。逆に、個人差・変動が最も大きいのは身体活動によるものです。この2つを入れ替えた選択肢が定番です。

除脂肪体重と基礎代謝

基礎代謝量は除脂肪体重(筋肉・骨・内臓など脂肪以外の組織)の量に強く相関します。ここから、実務でも試験でも重要な結論が出ます。

減量中もレジスタンストレーニングを行う理由=除脂肪体重の減少を最小限にし、基礎代謝量の低下を防ぐため。

極端な食事制限だけの減量では筋も一緒に失われ、基礎代謝が下がって「痩せにくく、リバウンドしやすい身体」になります。これはクライアントへの説明でも頻出のロジックです。


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6-2. 三大栄養素 — 計算問題はこの3つの数字で解ける

計算問題はこの3つの数字だけで解ける。脂質だけが 9 kcal/g という点が引っかけの定番 炭水化物 4 kcal/g 主要なエネルギー源 高強度運動ほど依存度が高い 目安 総摂取エネルギーの45〜65% タンパク質 4 kcal/g 組織の構築と修復 一般 0.8 / 持久系 1.2〜1.4 筋力・パワー系 1.2〜2.0 g/kg体重/日 脂質 9 kcal/g 低〜中強度で主要な燃料 脂溶性ビタミンの吸収に必要 目安 総摂取エネルギーの20〜35% 体重管理の数字 体脂肪 1kg ≒ 7,700 kcal 減量 1日 500〜1,000kcal の不足 → 週 0.5〜1kg 増量 1日 300〜500kcal の余剰 → 週 0.25〜0.5kg 水分 運動前 2〜4時間に 5〜7 mL/kg体重 運動中 発汗量に応じてこまめに 運動後 失った体重 1kg あたり 1.25〜1.5 L
図6-1 三大栄養素の1gあたりのエネルギー量と摂取目安、体重管理と水分補給の基準値。

1gあたりのエネルギー量

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

栄養素 エネルギー 覚え方
炭水化物 4 kcal/g
タンパク質 4 kcal/g 炭水化物と同じ
脂質 9 kcal/g 脂質だけが約2倍
(参考)アルコール 7 kcal/g 栄養素ではないがエネルギーを持つ

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暗記必須: 4・4・9。計算問題はこの3つの数字さえあれば解けます。脂質だけ9という点が、そのまま引っかけになります。

例題:炭水化物60g、タンパク質25g、脂質15gを含む食事のエネルギー量は?

炭水化物 60 × 4 = 240 kcal
タンパク質 25 × 4 = 100 kcal
脂質   15 × 9 = 135 kcal
合計 = 475 kcal

脂質由来のエネルギーが占める割合を聞かれることもあります。135 ÷ 475 = 約28%。この「〜%」を出す一手間まで含めて練習しておきましょう。

炭水化物

⊳ この節の問題を解く(1問・3枚)

身体にとって主要なエネルギー源であり、運動強度が高くなるほど依存度が上がります

  • 体内にはグリコーゲン(貯蔵型の糖質)として肝臓と筋に貯蔵される
  • 貯蔵量には限りがあり、長時間の運動では枯渇が疲労の原因になる
  • 脳と神経系はグルコースを主要な燃料とする → 極端な糖質制限は集中力低下につながる
  • 摂取目安:総摂取エネルギーの45〜65%

📘 グリセミック指数(GI)=その食品が血糖値をどれだけ速く上げるかの指標。運動直後の素早い回復には高GI食品(バナナ、白米、スポーツドリンクなど)が、日常的な血糖管理には低GI食品(全粒穀物、豆類など)が適するとされます。

タンパク質

⊳ この節の問題を解く(4問・2枚)

組織の構築と修復が主な役割です。エネルギー源としての役割は本来小さく、糖質が不足したときに初めて大きく動員されます(=筋が削られる)。

対象 推奨量(g/kg体重/日)
一般成人(座業中心) 0.8
持久系アスリート 1.2〜1.4
筋力・パワー系アスリート 1.2〜2.0

⚠️ 引っかけ注意: 「タンパク質は多く摂れば摂るほど筋肥大する」は誤り。推奨量を超えた分は筋の合成に使われず、エネルギーとして消費されるか脂肪として蓄えられます。また 1回の食事で吸収できる量には限りがあるため、1日を通じて分散して摂るほうが有効とされます。

📘 必須アミノ酸=体内で合成できず、食事から摂る必要があるアミノ酸(成人で9種類)。これらをバランスよく含むタンパク質を完全タンパク質(肉・魚・卵・乳製品・大豆)といいます。植物性食品の多くは一部の必須アミノ酸が不足するため、複数を組み合わせる(米+豆など)ことで補い合えます。

脂質

  • 低〜中強度の運動における主要な燃料(高強度では炭水化物が主)
  • 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収に必要
  • 細胞膜やホルモンの材料になる
  • 摂取目安:総摂取エネルギーの20〜35%、うち飽和脂肪酸は10%未満
種類 特徴 主な食品
飽和脂肪酸 常温で固体。摂りすぎに注意 肉の脂身、バター
不飽和脂肪酸 常温で液体。心血管系に有益とされる 植物油、ナッツ、青魚
トランス脂肪酸 可能な限り避ける 一部の加工食品

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⚠️ 引っかけ注意: 「脂質は減らせば減らすほどよい」は誤り。極端な脂質制限は脂溶性ビタミンの吸収障害やホルモン産生の低下を招きます。摂りすぎもゼロも不適切、というのが正しい姿勢です。


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6-3. ビタミン・ミネラル — 「エネルギーにはならない」が要点

📘 微量栄養素=ビタミンとミネラルの総称。これ自体はエネルギー(kcal)を持ちませんが、エネルギー産生の代謝反応を進めるうえで不可欠です。

分類 特徴
水溶性ビタミン 過剰分は尿に排泄されやすい。毎日摂る必要がある ビタミンB群、C
脂溶性ビタミン 体内に蓄積する。過剰摂取による害が起こりうる A・D・E・K

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運動する人が不足しやすい代表的な微量栄養素

栄養素 役割 不足すると
酸素運搬(ヘモグロビンの構成成分) 貧血、持久力低下。月経のある女性、持久系選手で不足しやすい
カルシウム 骨の構成、筋収縮 骨密度低下、疲労骨折リスク
ビタミンD カルシウムの吸収を助ける 骨の健康を損なう。日照不足で不足しやすい
ナトリウム 体液量の維持 大量発汗時に不足すると低ナトリウム血症のリスク

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⚠️ 引っかけ注意: 「ビタミン剤を摂るとエネルギーが得られる」は誤り。ビタミンはエネルギーを産み出す反応を助けるのであって、それ自体はkcalを持ちません。「ビタミンB群でエネルギーアップ」という広告表現に引きずられないこと。


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6-4. 水分補給 — 領域4(熱中症)と直結する数字

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

体重のわずか2%の水分損失でパフォーマンスが低下し始めます。体重70kgなら1.4kg — 汗をかけば簡単に到達する量です。

ガイドライン

タイミング 摂取量の目安
運動の2〜4時間前 体重1kgあたり 5〜7 mL
運動中 発汗量に応じてこまめに(のどの渇きを待たない
運動後 失った体重1kgあたり 1.25〜1.5 L

例題:体重60kgのクライアントが運動2時間前に摂るべき水分量は? → 60 × 5〜7 = 300〜420 mL

例題:運動前62.0kg、運動後60.8kgだった。運動後に補給すべき量は? → 減少 1.2kg × 1.25〜1.5 = 1.5〜1.8 L

⚠️ 引っかけ注意: 「失った体重と同じ量(1kgにつき1L)を飲めばよい」は不十分。摂取した水分の一部は尿として排泄されるため、1.25〜1.5倍が推奨されます。

水かスポーツドリンクか

状況 推奨
60分未満の運動 水で十分
60分を超える運動、高温環境、大量発汗 炭水化物と電解質を含む飲料(糖質濃度 6〜8% が目安)

📘 低ナトリウム血症=大量に発汗した状態で水だけを多量に飲むと、血中のナトリウム濃度が薄まりすぎて起こる状態。頭痛、吐き気、混乱、重篤な場合は痙攣を招きます。長時間運動では「水をたくさん飲めば安全」ではない、という点が要注意です。


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6-5. 体重管理 — 減量・増量の安全なペース

覚えるべき基準値

体脂肪 1kg ≒ 7,700 kcal(約7,000〜7,700 kcalとされる)

目的 1日の過不足 期待される変化
減量 500〜1,000 kcal の不足 週 0.5〜1 kg の減少
増量 300〜500 kcal の余剰 週 0.25〜0.5 kg の増加

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例題:1日500kcalの不足を7日間続けると? → 500 × 7 = 3,500 kcal ÷ 7,700 ≒ 約0.45kg の減少

⚠️ 引っかけ注意: 「週2kg以上の減量ペースが望ましい」は誤り。急激な減量は除脂肪体重の損失、代謝の低下、栄養素の不足、リバウンドを招きます。安全な上限は週約1kg、パーセントで言えば体重の約1%/週が目安です。

減量時のポイント

  1. 極端なエネルギー制限を避ける(一般に女性1,200kcal/日、男性1,500kcal/日を下回らない)
  2. レジスタンストレーニングを併用して除脂肪体重を守る
  3. タンパク質摂取量を維持または増やす
  4. 特定の食品群を丸ごと排除しない
  5. 行動の変化として定着させる(一時的な「ダイエット」にしない)

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6-6. 食事全体の組み立てを伝える — 食事ガイド

個々の栄養素の話をする前に、皿の上でどう見えるかを伝えるほうが、クライアントには実行しやすくなります。テキスト第3版では、この「食事ガイド」の説明が最新版に更新されています。

📘 マイプレート(MyPlate)=アメリカ農務省(USDA)が示す食事ガイド。1枚の皿を4つに区切った絵で、果物・野菜・穀類・タンパク質の割合を示し、脇に乳製品を添えます。数字ではなく絵で伝えられるのが利点です。

押さえる点 内容
皿の半分 果物と野菜。野菜のほうを多めに
皿の残り半分 穀類とタンパク質源。穀類は半分以上を全粒穀物
添えるもの 低脂肪または無脂肪の乳製品
考え方 「禁止する食品」を並べるのではなく、全体のバランスと量を整える

食生活指針(アメリカでは『国民のための食生活指針』)も同じ発想で、特定の食品を悪者にせず、食事パターン全体を対象にします。飽和脂肪酸・添加糖類・ナトリウムを減らし、野菜・果物・全粒穀物を増やす、という方向づけです。

⚠️ 引っかけ注意 これらのガイドを一般的な情報として説明することは業務範囲内ですが、そのクライアント個人に合わせた献立を作ることは業務範囲外です。「マイプレートを使って1週間分の食事メニューを作成して渡す」はやってはいけない側に入ります。


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6-7. サプリメント — 「食事が先」が原則

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

📘 エルゴジェニックエイド=運動能力の向上を目的として用いられる物質や手段の総称。サプリメントはその一部です。

押さえる点 内容
基本姿勢 バランスの取れた食事が最優先。サプリメントは「補う」もので、置き換えるものではない
規制 医薬品と異なり製造前の有効性・安全性審査がない。表示どおりの成分が入っている保証も、禁止物質が混入していない保証もない
アスリートのリスク 意図せずドーピング検査に抵触する可能性がある
トレーナーの立場 販売・推奨には慎重に。医学的判断や治療的な栄養指導は業務範囲外

比較的エビデンスが確立しているものとしてクレアチン(高強度・短時間の反復運動の能力向上)、カフェイン(持久性・覚醒の向上)などが挙げられますが、試験で問われる中心は個々の成分の効果ではなく、上記の原則的な姿勢です。


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6-8. 栄養に関する業務範囲 — ここで線を引く

これは領域4の「業務範囲」と完全に同じ論点です。栄養に関する設問の最頻出テーマでもあります。

パーソナルトレーナーができること ◯ 資格を持つ専門職に委ねること ×
公的な食事ガイドラインの一般的な情報提供 個別の食事プラン(献立)の作成
「主食・主菜・副菜をそろえましょう」といった一般的助言 疾患(糖尿病、腎疾患等)に対する食事療法
水分補給の一般的ガイドラインの説明 サプリメントの治療目的の推奨・処方
クライアントの食事記録を一緒に眺めて気づきを促す 栄養状態の診断・評価
適切なタイミングで管理栄養士へ紹介する 医薬品との相互作用に関する助言

⚠️ 引っかけ注意: 「クライアントに詳しい食事プランを作ってあげる」ことは、一見すると親切ですが業務範囲外です。設問では「熱心なトレーナーが良かれと思ってやったこと」が不適切な選択肢として登場します。善意かどうかではなく、資格の範囲かどうかで判断してください。


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6-9. 行動変容ステージモデル — 「今どこにいるか」を見極める

⊳ この節の問題を解く(1問)

ここから心理学です。運動指導における最大の問題は「知らないこと」ではなく「続かないこと」であり、その答えがこの節にあります。

段階を飛ばして「実行」の助言をしても届かない。今どの段階にいるかを見極めることが先 ① 前熟考 変える気がない (6か月以内に  始める意思なし) ② 熟考 やろうか迷う (6か月以内に  始めるつもり) ③ 準備 やり始めている (1か月以内に  開始予定) ④ 実行 続けている (開始から  6か月未満) ⑤ 維持 習慣になった (6か月以上  継続) 後戻り(再発)はどの段階からも起こりうる — 失敗ではなく想定内の出来事として扱う 段階に応じた働きかけ ①情報提供と気づき ②利点と障害を一緒に整理 ③具体的な計画と目標設定 ④継続の工夫・社会的支援 ⑤再発予防と目標の更新 ⚡ 自己効力感(自信)を高める4つの源:①小さな成功体験 ②他者の成功を見る ③言葉による励まし ④体調・気分の改善。 なかでも「① 実際にできた」という体験が最も強く効く。だから初回セッションは必ず成功で終わらせる。
図6-2 行動変容ステージモデルの5段階と、各段階に応じた働きかけ。後戻りはどの段階からも起こりうる。

📘 行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル)=人が行動を変えるとき、5つの段階を順に進んでいくとする考え方。重要なのは、段階によって効果的な働きかけが違うという点です。

段階 状態 目安 有効な働きかけ
① 前熟考 変えるつもりがない 6か月以内に始める意思なし 情報提供と気づき。運動の利点を知ってもらう。具体的なプログラムを提案しても届かない
② 熟考 やろうか迷っている 6か月以内に始めるつもり 利点と障害を一緒に整理する。迷いを責めない
③ 準備 少しやり始めている 1か月以内に開始予定 具体的な計画づくりと目標設定。ここで初めてプログラムが効く
④ 実行 続けている 開始から6か月未満 継続の工夫、社会的支援、再発予防。最も後戻りしやすい段階
⑤ 維持 習慣になった 6か月以上継続 再発予防と目標の更新。飽きへの対処

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⚠️ 引っかけ注意: 段階を飛ばした助言は届きません。 前熟考の人に「では週3回のプログラムを組みましょう」と提案するのは、熱心ではあっても不適切。この構図の設問が繰り返し出ます。「まず今どの段階かを見極める」が正解の型です。

後戻り(再発)はどの段階からも起こりうる、というのがこのモデルのもう一つの要点です。後戻りは失敗ではなく想定内の出来事として扱い、「またやり直せばいい」という枠組みで支援します。


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6-10. 自己効力感と動機づけ

自己効力感

📘 自己効力感=「自分にはこれができる」という、特定の行動に対する自信。運動の継続を予測する最も強い心理的要因のひとつとされます。

自己効力感を高める4つの源(強い順)

内容 現場での使い方
① 遂行行動の達成(成功体験) 実際にできた経験。最も強力 初回は必ず成功で終わる内容にする。達成可能な小目標を積む
② 代理的経験(モデリング) 自分と似た他者の成功を見る 同年代・同条件のクライアントの事例を伝える
③ 言語的説得 言葉による励まし 具体的に褒める(「よくなった」より「膝の向きが安定した」)
④ 生理的・情動的状態 体調や気分の改善 「前より階段が楽になった」という変化を言語化する

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暗記必須: 最も強いのは①実際にできたという体験。だから初回セッションを高強度で追い込むのは逆効果です。「きつくてもうやりたくない」は自己効力感を下げます。

内発的動機づけと外発的動機づけ

種類 内容
内発的動機づけ 活動そのものが楽しい、満足できる 「体を動かすのが気持ちいい」「上達が面白い」
外発的動機づけ 外部からの報酬や結果のため 「痩せて服を着たい」「医者に言われたから」

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長期の継続に強いのは内発的動機づけです。開始のきっかけは外発的でも構いませんが、続けるうちに内発的な楽しさへ移行できるよう支援することが望まれます。

⚠️ 引っかけ注意: 外発的動機づけが常に悪いわけではありません。開始の後押しとしては有効です。問われるのは「長期継続にはどちらが有利か」であり、その答えが内発的動機づけです。


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6-11. 目標設定 — SMARTの原則

⊳ この節の問題を解く(1問)

SMART な目標設定 SSpecific 具体的に(「痩せる」ではなく) MMeasurable 測定できる形で AAttainable 達成可能な水準に RRelevant 本人にとって意味がある TTime-bound 期限を決める 短期目標を積み上げて長期目標へつなぐ 覚醒水準とパフォーマンス(逆U字) 最適 低い 覚醒水準 高い 成績 ⚡ 覚醒が低すぎても高すぎても成績は落ちる。緊張しすぎる人には呼吸法やリラクセーション、意欲が低い人には 音楽や明確な目標で覚醒を上げる。「気合いを入れれば入れるほどよい」は誤り。
図6-3 SMARTな目標設定の5要素と、覚醒水準とパフォーマンスの逆U字関係。
頭文字 意味 悪い例 → 良い例
Specific 具体的 「痩せる」→「体脂肪率を3%下げる」
Measurable 測定できる 「体力をつける」→「1マイル走を1分短縮」
Attainable 達成可能 「1か月で20kg減」→「3か月で4kg減」
Relevant 本人にとって意味がある トレーナーの理想ではなくクライアントの価値観に沿う
Time-bound 期限がある 「いつか」→「12週後までに」

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短期目標と長期目標

  • 長期目標=最終的に目指す姿(6か月〜1年)
  • 短期目標=そこへ至る途中の到達点(1〜4週間ごと)

短期目標の役割は、成功体験を繰り返し供給することです。長期目標だけでは、達成までの間に「できている実感」が得られず脱落します。短期目標は自己効力感の供給装置だと考えるとつながりが見えます。

結果目標とプロセス目標

種類 特徴
結果目標 「体重を5kg減らす」 分かりやすいが、自分だけでは完全に制御できない
プロセス(行動)目標 「週3回トレーニングに来る」 自分で制御できる。初期段階で特に有効

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⚠️ 引っかけ注意: 初心者に結果目標だけを与えると、体重が停滞した時点で「失敗した」と感じて離脱します。制御できる行動そのものを目標にするのが、継続を支える設計です。


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6-12. 覚醒水準とメンタルスキル

逆U字仮説

📘 覚醒水準=心身の活性化の度合い。緊張や興奮の強さと考えてください。

覚醒が低すぎても高すぎてもパフォーマンスは落ち、中程度で最も高くなります(逆U字の関係)。

クライアントの状態 対応
緊張しすぎ(覚醒が高すぎる) 呼吸法、漸進的筋弛緩法、リラクセーション
意欲が低い(覚醒が低すぎる) 音楽、明確な目標設定、声かけ

⚠️ 引っかけ注意: 「気合いを入れれば入れるほど成績は上がる」は誤り。また、最適な覚醒水準は課題によって異なります。デッドリフトの1RMのような単純で力を要する課題は高めの覚醒が適し、繊細な技術を要する課題では低めの覚醒が適します

主なメンタルスキル

⊳ この節の問題を解く(1枚)

技法 内容
イメージ(メンタルリハーサル) 動作を頭の中で鮮明に再現する。うまくいく様子を描くのがポイント
セルフトーク 自分への語りかけ。否定形(「膝を入れるな」)より肯定形(「膝を外に開く」)が有効
リラクセーション 呼吸法、漸進的筋弛緩法など
ルーティン 実施前の一定の手順。集中を安定させる

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6-13. コミュニケーションとアドヒアランス

📘 アドヒアランス=クライアントがプログラムを守り、続けている度合い。

傾聴と質問

技法 内容
積極的傾聴 相手の話を遮らず、要約して返し、理解を確認する
開かれた質問 「はい/いいえ」で終わらない質問。「運動についてどう感じていますか?」
閉じた質問 事実確認に有効。「週に何回来られそうですか?」
共感の表明 評価や説教をせず、相手の感情を認める

⚠️ 引っかけ注意: 面接場面の設問では、「説得する」「正論を述べる」「叱咤する」選択肢はほぼ不正解です。特に前熟考・熟考段階のクライアントに対して正論を突きつけると、かえって抵抗を強めます。正解は相手の言葉を引き出す方向にあります。

非言語的コミュニケーション

⊳ この節の問題を解く(1問)

表情、視線、姿勢、身体の向き、声のトーン — これらは言葉以上に伝わります。腕を組む、時計を見る、他の会員を目で追うといった動作は、それだけで信頼を損ないます。

ドロップアウトの主な要因と対策

要因 対策
時間がない 短時間で完結するプログラム、優先順位の整理
効果が見えない 体重以外の指標(挙上重量、周径囲、体感)で変化を可視化
つまらない・単調 種目や形式に変化をつける、グループ要素の導入
きつすぎる 強度を下げる。初期の過負荷は最大の離脱要因
孤独 社会的支援。家族・友人・グループの巻き込み
痛み・不快感 フォームの見直し、必要に応じて医療職へ紹介

社会的支援(家族や仲間の後押し)は、運動継続を予測する強い要因です。「一緒にやる人がいる」「家族が応援している」という条件を作れるかどうかは、プログラムの中身と同じくらい効きます。


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⚡ この章で暗記必須の数字

項目 数値
炭水化物・タンパク質 4 kcal/g
脂質 9 kcal/g
(参考)アルコール 7 kcal/g
体脂肪 1kg ≒ 7,700 kcal
炭水化物の摂取目安 総エネルギーの 45〜65%
脂質の摂取目安 総エネルギーの 20〜35%(飽和脂肪酸は10%未満)
タンパク質:一般成人 0.8 g/kg体重/日
タンパク質:持久系 1.2〜1.4 g/kg体重/日
タンパク質:筋力・パワー系 1.2〜2.0 g/kg体重/日
減量ペース 1日 500〜1,000 kcal の不足 → 週 0.5〜1 kg
増量ペース 1日 300〜500 kcal の余剰 → 週 0.25〜0.5 kg
運動前の水分 2〜4時間前に 5〜7 mL/kg体重
運動後の水分 失った体重 1kg あたり 1.25〜1.5 L
パフォーマンス低下が始まる脱水 体重の 2%
スポーツドリンクの糖質濃度 6〜8%
電解質入り飲料が推奨される運動時間 60分超
基礎代謝が総消費に占める割合 60〜75%
行動変容ステージ:熟考の期間 6か月以内に始めるつもり
行動変容ステージ:準備の期間 1か月以内に開始予定
行動変容ステージ:維持の基準 6か月以上の継続

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これで全4領域と、その土台となる基礎知識がそろいました。

次は最後の仕上げ — 試験当日に見返すための数値暗記シートです。ここまでに出てきた「覚えるしかない数字」だけを、領域をまたいで一枚に集約します。そのあと、いよいよ本番同様の模擬試験3セット(各155問・3時間)に進みます。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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