実践|自分専用プロトコルの設計
この章の狙い
読む章はここで終わる。この章と次章は書く章である。 第1章から第11章までの判断を、1枚のプロトコルに落とす。
要点: 設計の成否は、意欲ではなく3つの決めごとで決まる。対象を1つに絞ること、頻度を先に固定すること、そして最低ラインを用意しておくことである。
設計の3原則
1.対象は1つだけ
同時に複数を変えると、どれが効いたのか分からなくなる。 第9章のメンタル・ラボの原則――変える変数は1つ――が、そのまま設計にも当てはまる。
2.頻度を先に固定する
第5章のとおり、強度から入ると2週目に消える。 最初の2週間は、量を増やさないことのほうが難しい。ここを守れるかが分かれ目になる。
3.最低ラインを持つ
これはゴギンズの原則には無い要素で、第11章の批判を受けて足すものである。
「毎日やる」だけを決めると、1日欠けた瞬間に全体が崩れる。 崩れると自己批判が起動し、そのまま離脱する。 これを防ぐには、どんな日でも達成できる最低ラインを先に決めておく必要がある。
⚡ 3段階で決める
- 最低ライン:体調が最悪の日でも必ずできる量。連続記録はここで維持する
- 標準:ふつうの日にやる量。これが本体
- 追加:余裕がある日だけ。やらなくても失敗ではない
設計シート
以下の7ステップを、順に埋める。飛ばさない。
STEP 1 現在地を測る
第2章の作業。数字にすることだけが目的で、評価は入れない。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 行き先 | 到達したい状態を1つ。他人が判定できる形で |
| 合否ライン | 数値。「達成した/していない」が割れない形で |
| 期限 | 日付。自分で決めた期限は延びるので、外部の予定に結びつける |
| 現在地 | 今日の数字。3つまで |
| 1日あたり | 期限までの日数で割った量 |
5行目が実行不能なら、精神論に逃げず、行き先か期限を直す。 ここは第2章の結論そのままである。
STEP 2 対象を1つ選ぶ
第5章の作業。基準は「つらいか」ではなく「避けているか」。
避けている行動を10個書き出し、先延ばししている順に並べ、上から1つ選ぶ。 選んだものが、STEP 1 の行き先と噛み合っているかを確認する。噛み合っていなければ、どちらかを直す。
STEP 3 3段階の量を決める
ここが設計の中心になる。
| 段階 | 決め方 | 例 |
|---|---|---|
| 最低ライン | 発熱している日でもできる量 | 服を着て玄関を出る/資料を開いて1行書く |
| 標準 | ふつうの日の量。最初の2週間はここを固定 | 20分走る/30分書く |
| 追加 | やってもやらなくてもよい | 距離を伸ばす/2セット目に入る |
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⚠️ 最低ラインでよくある間違い
- 「30分の日と15分の日」のように、最低ラインを高く置く。最低ラインは体調が最悪の日を基準にする
- 最低ラインで済ませた日を「失敗」と記録する。最低ラインの達成は成功である。これが崩壊を止める仕組み
- 最低ラインを毎日使う。3週続けて最低ラインなら、設計のほうを見直す
STEP 4 交渉場面と最初の1動作
第9章の作業。やめる理由が浮かぶ場面を3つ特定し、それぞれの最初の1動作を決める。
- 場面は、曜日・時刻・直前の行動まで具体化する
- 1動作は5秒以内に完了するものにする
- 形は「もし〔場面〕になったら、私は〔1動作〕をする」
STEP 5 障害の予行を5件
第8章の作業。起こりそうな順ではなく、起きたら効く順に5件。 各件に「もし〜ならば、私は〜する」で対処を1つ。抽象語を使わない。
第6章で書いた瓶(過去に崩れた場面)から拾うと速い。
STEP 6 クッキージャーを置く
第6章の作業。16件以上を書き出し、苦しいときに開ける場所に置く。 「達成・持久・克服・回復」の4種類が揃っているか確認する。
STEP 5 の予行と場所を分ける必要はない。同じ1枚でよい。
STEP 7 撤退基準を先に書く
第11章の結論。押す前に、退く条件を決める。 詳細は第13章で扱うが、この時点で最低限3つは書いておく。
- 身体:この症状が出たら中止する(痛み、しびれ、胸部症状)
- 心理:この状態が何日続いたら中止する
- 成果:何週間、指標が動かなかったら設計を変える
30日の進め方
| 期間 | やること | やらないこと |
|---|---|---|
| 1〜14日 | 頻度だけを守る。標準を固定 | 量を増やす |
| 15〜21日 | 強度を上げる。時間・回数・難度のうち1つだけ | 2つ以上を同時に上げる |
| 22〜28日 | 予測できない条件を1つ入れる(天候、時間帯、場所) | 最低ラインを廃止する |
| 29〜30日 | 記録を見て、次の30日を設計する | そのまま延長する |
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最終日にそのまま延長しないのは、第9章の「終点を置かない」の実装である。 続けるにしても、設計し直してから続ける。惰性と継続は別物である。
⚠️ 設計のアンチパターン
- 対象を3つ選ぶ。2週間で全部消える
- 最低ラインを作らない。1日の欠けが全体の終わりになる
- 撤退基準を後回しにする。押している最中には書けない
- 初日に最大量をやる。初日の記録は3週目の基準にならない
⚡ 第12章の通過チェック
- STEP 1〜7 をすべて埋め、1枚に収まっている
- 最低ライン・標準・追加の3つが、量として区別できる形で書けている
- 撤退基準を、押し始める前に3つ書いた
次章へ
設計は書いた時点では動かない。動かすのは記録と判断である。 次章では、日々の記録を3項目に絞る方法、崩れた日の復帰手順、 そしていつ退くかの基準を確定させる。