続ける|90日運用と記録シート
この章の狙い
要点: 回し方は、週に15分のレビューと、30日・90日での測り直しの2つだけである。日々の記録は第6章の紙を続ければよく、新しく覚えることはない。90日は完了の期限ではなく、測り直す間隔である。
第1章で「この教材は第15章の運用に入った時点で読み終わりになる」と書いた。ここから先は、読むものではなく回すものである。
週次レビュー — 15分・5つの問い
曜日と時刻を決める。「時間があるとき」では実行されない(第9章と同じ理屈)。日曜の夜を勧める人が多いが、日曜の午後が引き金の人には向かない。自分の記録で、いちばん安全な時間帯を選ぶ。
答えるのは5つだけである。
⚡ 週次レビューの5つの問い
- 1. 今週、引き金に出会って、こらえた回数は?(数える)
- 2. 崩れた場面はあったか。あったなら、どの引き金か(第13章の3類型で分類)
- 3. 環境設計の穴は見つかったか。新しい抜け道を思いついたか(第7章の表に足す)
- 4. 土台はどうだったか。睡眠・運動・話した相手(第14章の4項目)
- 5. 来週、1つだけ変えるなら何か(1つだけ。複数書かない)
1番を最初に置いてあるのが重要である。成功した回数から数える。失敗から数えると、レビュー自体が自己嫌悪の時間になり、続かない。
5番を1つに限る。複数変えると、何が効いたか分からなくなる。それ以前に、実行されない。
何を指標にするか
第2章から繰り返してきた方針を、ここで確定させる。継続日数を進捗の指標にしない。
理由をもう一度書く。第13章の禁欲違反効果である。「32日目」が「0日目」に戻る形式は、全か無かの枠組みを毎日強化する。1回のラプスが、積み上げの全損に見える数え方をわざわざ選ぶ必要はない。
代わりに、次の4つを見る。
| 指標 | 数え方 | 良い方向 |
|---|---|---|
| こらえた回数 | 引き金に出会って開かなかった回数(週) | 増える |
| 崩れたときの長さ | 1回のラプスが何時間・何日続いたか | 短くなる |
| 機能障害 | 第2章の項目10〜12の小計 | 下がる |
| 土台 | 睡眠時間、歩いた回数、話した相手の数 | 安定する |
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2番目が、最も実用的な指標である。「今月も1回崩れた」だけを見ると去年と同じに見えるが、去年は1週間戻り、今回は3時間で戻ったなら、それは大きな前進である。第13章の5手順が働いた証拠になる。
⚠️ 指標の扱いでやりがちな失敗
- 継続日数を数え、崩れたときにゼロに戻す。禁欲違反効果を毎日強化する。
- 使用時間の合計だけを見る。第2章のとおり、量では判定できない。
- 週ごとの上下に一喜一憂する。見るのは4週間の傾きである。
- 良い週だけ記録する。悪い週のデータが、いちばん材料になる。
30日・90日で測り直す
第2章の12項目を、開始時・30日後・90日後の3回測る。表は第2章にある。
読み方に注意点が3つある。
1つ目。合計が下がらなくても、機能障害の小計が下がっていれば前進である。生活が回り始めたということで、これがいちばん重い変化である。
2つ目。合計だけ下がって機能障害が残っているなら、使い方は変わったが生活は戻っていない。この場合、足りないのは第9章(空白を埋める)と第14章(土台)である。環境設計をさらに強くしても効かない。
3つ目。30日で下がらないことは珍しくない。とくに項目1(使っていないときも考えている)と項目6(他の趣味への興味)は、遅れて動く。90日まで待って判断する。
| 30日後の状態 | 読み方と次の一手 |
|---|---|
| 合計も機能障害も下がった | 順調。第15章の運用を続ける |
| 機能障害だけ下がった | 最も良い形。合計は遅れて下がる |
| 合計だけ下がった | 第9章と第14章に戻る |
| どちらも下がらない | 環境設計の穴を疑う(第7章の抜け道の表を見直す) |
| 上がった | 第2章のレッドフラグを再確認し、相談を検討する |
記録シート
必要なのは4枚である。すべて紙でよい。
1. 日々の記録(第6章の続き)
6つの欄(時刻・場所・直前の行動・気分・強さ・どうしたか)。2週間で終わりにせず、続ける。ただし負担なら、崩れた場面とこらえた場面だけに絞ってよい。
2. 週次レビューの記録
| 週 | こらえた回数 | 崩れた回数と長さ | 睡眠・運動・会話 | 来週変える1つ |
|---|---|---|---|---|
| 第1週 | ||||
| 第2週 | ||||
| 第3週 | ||||
| 第4週 |
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3. 引き金と対策の対応表
第6章で特定した引き金に、第7章・第9章の対策を貼りつけた表である。崩れるたびに1行増える。
| 引き金(場面) | 打っている手 | 効いているか |
|---|---|---|
| 1. 布団に入った直後 | 端末を居間の箱に置く | |
| 2. 帰宅直後 | 玄関で箱に入れる | |
| 3. 金曜の夜 | 予定を先に入れる |
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4. 抜け道の一覧
第7章で書き出したもの。週次レビューの3番で、その週に思いついたものを足す。
| 抜け道 | 潰し方 | 塞いだ日 |
|---|---|---|
| 1. 別のブラウザ | 消す/同じ設定を入れる | |
| 2. 職場の端末 | 触らないと決める | |
| 3. |
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90日を越えたあと
90日で「終わり」にはならない。残すものと、やめてよいものを分ける。
⚡ 90日を越えたら
- 残す … 環境設計(第7章の第1層と第2層)。これは一生残してよい
- 残す … 睡眠の3手(第14章)。土台は戻すと崩れる
- 残す … 週次レビュー。ただし月1回に減らしてよい
- やめてよい … 日々の詳細な記録。崩れた場面だけに絞る
- やめてよい … 第9章の代替行動の「小さすぎる量」の設定。自然な量に戻す
- 慎重に … 遮断の解除。外すなら1つずつ、1か月あけて
環境設計を全部戻す、という選択はしないほうがよい。第3章で述べたとおり、手がかり反応は年の単位で残る。端末を寝室に戻すことに、得られるものはほとんどない。
崩れの前兆
- 📘 前兆:ラプスが起きる前に現れる、行動や状態の小さな変化。本人には無関係に見えることが多い。
第13章の「見せかけの無関係な決定」と重なるが、より手前で気づくための一覧を置く。週次レビューで、この一覧を眺める。
| 前兆 | 起きていること |
|---|---|
| 記録を書かなくなった | 監視が外れている。最も多い前兆 |
| 週次レビューを飛ばした | 同上。2週続けて飛ばしたら要注意 |
| 睡眠時間が2時間以上減った | 実行機能が落ちる(第14章) |
| 誰とも話していない週があった | 孤立が引き金になる |
| 「もう大丈夫だと思う」と考えた | 環境を緩める直前に出る |
| 環境設計を1つ外した | 「調べ物のため」など理由がついていることが多い |
| 内容を確認しに行った | 「どんな感じだったか見るだけ」は再開の入口 |
下の2つが出たら、その週のうちに戻す。気づいた時点で戻せば、ラプスにならずに済む。
3か月ごとの定期点検
90日以降は、3か月に一度、次を確認する。10分で終わる。
⚡ 3か月ごとの点検(4項目)
- 第2章の12項目を測る(合計と、項目10〜12の小計)
- 環境設計が残っているか確認する(勝手に外れていることがある)
- 前兆の一覧を眺める
- 第5章の「一行の理由」を読み直し、いまの生活に合っているか確かめる
4番目が効く。理由は生活とともに変わる。1年前に書いた理由が、いまの自分に届かなくなっていることがある。届かなくなった理由を持ち続けても効かないので、書き直す。
⚡ 第15章の通過チェック
- 週次レビューの曜日と時刻を決めた
- 5つの問いを、そのまま使える形で書き出した
- 指標を4つ(こらえた回数・崩れた長さ・機能障害・土台)に決めた
- 記録シート4枚を用意した
- 30日後・90日後に測り直す日を、実際に予定に入れた
- 前兆の一覧を、週次レビューで見る場所に置いた
⚡ この章の暗記必須ボックス
【週次レビュー】曜日と時刻を決める。15分・5つの問い
①こらえた回数(ここから数える)②崩れた場面と引き金の類型
③環境の穴・新しい抜け道 ④土台(睡眠・運動・会話)
⑤来週1つだけ変えること
【4つの指標】 こらえた回数(増える)
崩れたときの長さ(短くなる)← 最も実用的
機能障害の小計(下がる)
土台(安定する)
★継続日数は使わない(禁欲違反効果を強化するため)
【測り直し】 開始時・30日後・90日後に第2章の12項目
合計が下がらなくても機能障害が下がっていれば前進
合計だけ下がって機能障害が残る → 第9章と第14章に戻る
30日で下がらないのは珍しくない(項目1と6は遅れて動く)
【記録シート4枚】
①日々の記録 ②週次レビュー ③引き金と対策の対応表 ④抜け道の一覧
【90日以降】 残す=環境設計の第1層と第2層/睡眠の3手/月1のレビュー
やめてよい=詳細な日々の記録/小さすぎる量の設定
遮断を外すなら1つずつ、1か月あけて
【前兆】 記録を書かなくなった(最多)/レビューを飛ばした
睡眠が2時間以上減った/誰とも話さない週があった
「もう大丈夫」と考えた/環境設計を1つ外した
内容を確認しに行った ← この2つは、その週のうちに戻す
【3か月ごと】 12項目を測る/環境の確認/前兆の一覧/理由の読み直し
読み終えたあとに
全15章が終わった。最後に、この教材の使い方をもう一度だけ書いておく。
この教材は、通読して終わるものではない。手元に置いて、次の3つのときに開く。
| いつ | どこを開くか |
|---|---|
| 崩れたとき | 第13章の5手順。そのあと第7章の抜け道の表 |
| つらくて続かないとき | 第8章(波の形)と第14章(土台) |
| 測り直すとき | 第2章の12項目と、この章の読み方 |
そして、うまくいっているときは開かなくてよい。週に15分のレビューだけ回っていれば、それでこの教材の目的は達している。
第2章で書いたことを、最後にもう一度。日常生活が回らない、気分の落ち込みが2週間以上続く、死にたい気持ちがある — このいずれかに当てはまるときは、この教材を進めるより先に、精神科・心療内科か精神保健福祉センターに相談してほしい。そちらが先である。