🧭自分ラボ📘身体の最適化
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CHAPTER 11 トレーニング 読む目安 約10分

トレーニング|可動域とストレッチ

この章の狙い

要点: ストレッチはけがを防ぐ万能の方法ではない。可動域を広げたいなら、端まで動かす筋トレがいちばん確実である。ストレッチはその補助として使う。

柔軟性の話には、確かめられていない主張が多い。「柔らかいほどけがをしない」「トレーニング前には必ず伸ばす」といったものである。

この章では、何が確かめられていて何がそうでないかを分け、実際に何をやるかまで決める。

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柔軟性とは何を指すのか

⊳ この節の問題を解く(1問)

柔軟性は、関節が動く範囲の大きさである。これを可動域という。

可動域を決めている要素は2つある。

1. 構造。 関節の形、骨の当たり方、靱帯(じんたい)の長さ。ここは大きくは変えられない。股関節の形は人によって違い、同じ深さまでしゃがめない人がいるのは、努力の問題ではない。

2. 神経の許容。 「これ以上は危ない」と身体が判断して、筋肉を縮める働きである。ストレッチで変わるのは主にこちらだと考えられている。(根拠:中程度)

  • 📘 可動域:関節を動かせる範囲。角度で表される。
  • 📘 神経の許容:ここまでなら安全だと身体が判断している範囲。伸ばす習慣で広がる。

つまり、伸ばして柔らかくなったと感じるのは、筋肉が物理的に長くなったからというより、身体が許す範囲が広がったからである。

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2種類のストレッチ

止めて伸ばす(静的ストレッチ)。 伸びた位置で20〜60秒ほど保つ。可動域を広げる目的に向く。

動かしながら伸ばす(動的ストレッチ)。 関節を大きく動かす運動を繰り返す。腕を回す、脚を振る、股関節を回す。トレーニング前の準備に向く。

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トレーニングの前に長く伸ばさない

⊳ この節の問題を解く(2問)

トレーニングの直前に、1か所を60秒以上止めて伸ばすと、その直後の筋力と出力が一時的に落ちることが知られている。(根拠:中程度〜強い)

落ち幅は大きくないが、重い重量を扱う日には不利に働く。

前と後では、やることが違う トレーニングの前 軽い有酸素で体温を上げる(5分) 動かしながら伸ばす(各10回ほど) その日の種目の軽いセット トレーニングの後・別の時間 止めて伸ばす(1か所30〜60秒) 硬い部位を2〜3回くり返す 風呂上がりや就寝前でもよい 前に長く止めて伸ばすと、その直後の力は落ちやすい。 どうしても前に伸ばしたいときは、1か所20〜30秒までにして、 そのあとに軽いセットを挟んでから本番に入る。 可動域そのものを広げたいなら、端まで動かす筋トレがいちばん確実。
トレーニングの前後で使うストレッチの種類を分けた図

そこで、前後で内容を分ける。

。軽い有酸素運動で体温を上げ、動かしながら伸ばし、その日の種目の軽いセットを行う。

後、または別の時間。止めて伸ばす。1か所30〜60秒を2〜3回。

どうしても前に伸ばしたい部位があるなら、20〜30秒までにして、そのあとに軽いセットを挟む。それで影響はほぼ消える。

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けがの予防に効くのか

⊳ この節の問題を解く(1問)

「ストレッチはけがを防ぐ」という主張は、思われているほど強い根拠を持たない。

運動前の静的ストレッチが、けがの発生を減らすという証拠は一貫していない。むしろ効果がはっきりしているのは、準備運動そのもの(体温を上げ、動きを予習すること)である。(根拠:中程度)

一方で、筋力を強くすることは、けがの予防に効くという報告は比較的しっかりしている。とくにハムストリングのような、伸びながら力を出す局面で痛めやすい部位では、そこを鍛えることが予防になる。(根拠:中程度〜強い)

まとめると、優先順位は次のようになる。

  1. 準備運動をする
  2. 必要な部位を鍛える
  3. 可動域が足りないところを伸ばす

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可動域を広げる最短の道

⊳ この節の問題を解く(1問)

意外に思われるかもしれないが、端まで動かす筋トレが、可動域を広げる方法としてもっとも確実である。(根拠:中程度)

理由は2つある。伸びた位置で力を出すため、身体が「その範囲は安全だ」と学習しやすいこと。そして、その範囲で筋力がつくため、実際に使える可動域になることである。

具体的には、次のような種目が該当する。

  • 深くしゃがむスクワット(無理のない範囲で)
  • 伸びた位置で負荷がかかる胸の種目
  • ルーマニアンデッドリフト(ハムストリングが伸びる)
  • 肩の可動域を大きく使う引く種目

伸ばすだけの時間を長く取るより、動かす範囲を広げるほうが実用的である。ストレッチは、その動きが取れない部位を補う位置づけになる。

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何を伸ばすか

⊳ この節の問題を解く(1問)

全身をまんべんなく伸ばす必要はない。現代の生活で硬くなりやすい部位は決まっている。

部位 硬くなる原因 影響
股関節の前側 長時間の座位 腰が反りやすくなる
ハムストリング(太ももの裏) 座位、動かさないこと 前屈がしにくい
胸と肩の前側 前かがみの姿勢 肩が前に出る
背中の上部の回旋(かいせん) 座位 ひねる動きが出にくい
ふくらはぎ 靴、歩行の減少 しゃがむ深さが出ない

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この5か所を、1回5〜10分で回せる。毎日でなくてもよい。週4〜5回で十分である。

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いつやるか

トレーニングの後。すでに体温が上がっているので伸びやすい。そのまま流れで済む。

風呂上がり。同じ理由で伸びやすい。

寝る前。副交感神経(ふくこうかんしんけい)が優位になりやすく、寝つきの助けになる人がいる。第13章の就寝前の習慣と組み合わせられる。

仕事の合間。長く座ったあとに1〜2分立って動かす。可動域より、血流と集中の回復に効く(第15章)。

  • 📘 副交感神経:休息の側の神経。優位になると心拍が落ち着き、眠りに入りやすくなる。

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痛みとの付き合い方

⊳ この節の問題を解く(1問)

伸ばして強い痛みが出る範囲まで行かない。 気持ちよく突っ張る程度で止める。痛みを我慢して伸ばしても、可動域は速くは広がらない。

同じ場所の痛みが2週間以上続くなら、ストレッチで解決しようとしない。 腰、肩、膝の慢性的な痛みには、可動域以外の原因があることが多い。整形外科や理学療法の専門家に相談する。

しびれ、力が入らない、夜間に強くなる痛みは、様子を見るべきものではない。早めに受診する。

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姿勢についての注意

⊳ この節の問題を解く(1問)

「姿勢が悪いから痛みが出る」という説明は、思われているほど単純ではない。特定の姿勢と痛みの関係は、研究では一貫していない。(根拠:弱い〜中程度)

現時点で言えることは、同じ姿勢を長く続けることのほうが問題だということである。完璧な姿勢を保とうと力み続けるより、こまめに姿勢を変え、動く回数を増やすほうが現実的である。

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トレーニング前の5分の型

⊳ この節の問題を解く(1問)

前にやることを決めておくと、毎回迷わない。次の順で5分である。

  1. 軽い有酸素運動(自転車か早歩き)を3分
  2. 股関節を大きく回す(左右各10回)
  3. 脚を前後に振る(左右各10回)
  4. 腕を大きく回す(前後各10回)
  5. 背中を左右にひねる(各10回)

そのあと、その日の1種目目の軽いセットに入る。動かしながら行うのが要点で、止めて伸ばすのはこの場面ではない。

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トレーニング後の5分の型

硬くなりやすい5か所を、1か所30〜60秒ずつ伸ばす。息を止めない。

股関節の前側。片膝立ちになり、後ろ脚の側の尻に力を入れて、骨盤を立てたまま前へ体重を移す。腰を反らせて伸ばした気になりやすいので注意する。

ハムストリング。片脚を前に出してかかとをつけ、股関節から前に折る。膝は伸ばしきらなくてよい。

胸と肩の前側。ドア枠や柱に前腕をつけ、身体を前に回す。肩の高さを変えると、当たる場所が変わる。

背中の上部。座って背中を丸めない姿勢を保ち、上半身を左右にひねる。呼吸を吐きながら少しずつ進める。

ふくらはぎ。壁に手をつき、後ろ脚のかかとを床につけたまま前へ体重を移す。膝を曲げた形も加えると、深い側の筋肉に届く。

道具は要らない。続けるかどうかで差がつくので、5分で終わる形にしておく。

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硬さが種目の邪魔をしているとき

⊳ この節の問題を解く(1問)

可動域の不足は、特定の種目でつまずきとして表れる。原因の見当をつけておくと、対処が早い。

つまずき よくある原因 対処
深くしゃがめない 足首が硬い、股関節の構造 ふくらはぎを伸ばす、足の幅と向きを変える
頭上に腕を上げられない 胸と肩の前側が硬い、背中が丸い 胸を伸ばす、背中の回旋を入れる
前屈で床に届かない ハムストリングの硬さ ルーマニアンデッドリフトで伸びる位置を使う
背中を反らせずに引けない 背中の上部が硬い ひねりと胸の開きを入れる

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構造の限界にぶつかることもある。 何か月伸ばしても深くしゃがめないなら、それは努力の不足ではなく骨格の違いである。その場合は、足の幅や向きを変える、種目を替えるほうが早い。無理に同じ形を目指す必要はない。

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道具を使ったほぐし

⊳ この節の問題を解く(1問)

筒状の道具や、硬いボールで筋肉を押す方法がある。効果はどう見ればよいか。

一時的に可動域が広がる。 実行の直後に、動きの範囲が少し広がることは報告されている。(根拠:中程度)

筋肉痛が少し和らぐことがある。 感覚の面での改善であり、回復そのものが速くなるという証拠は強くない。(根拠:弱い〜中程度)

筋肉の形が変わるわけではない。 「癒着(ゆちゃく)をはがす」といった説明は、確かめられていない。

つまり、気持ちよく、動きやすくなるなら使えばよいが、ストレッチや筋トレの代わりにはならない。強い痛みが出るほど押しつけるのは、利点がない。

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どれくらいで変わるか

⊳ この節の問題を解く(1問)

可動域は、数日では変わらない。週4〜5回で続けたとき、4〜8週間で角度の変化として現れることが多い。

そして、やめれば戻る。維持のためには、週2〜3回でよいので続ける必要がある。

変化を測る方法を決めておく。 前屈でどこまで届くか、しゃがんだときにかかとが浮くか、壁に背をつけて腕を上げられるか。写真に撮っておくと、比べられる。第3章の記録と同じ考え方である。

⚠️ ストレッチでやりがちな誤り

  • トレーニングの直前に、長く止めて伸ばす。
  • ストレッチだけでけがを防げると考える。
  • 痛みを我慢して深く伸ばす。
  • 全身を毎日、長時間かけて伸ばそうとして続かなくなる。
  • 慢性的な痛みを、ストレッチだけで解決しようとする。
  • 可動域を広げたいのに、端まで動かす筋トレを避けている。

第11章の通過チェック

  • 可動域を決める2つの要素を言える
  • 前と後でやることが違う理由を説明できる
  • けが予防の優先順位を3つの順で言える
  • 可動域を広げる最短の道を言える
  • 受診すべき痛みの特徴を挙げられる

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次章へ

次の第12章では、回復を扱う。トレーニングで壊し、食事と睡眠で直す。この直す側が追いつかなくなると、いくら鍛えても伸びない。疲労をどう測り、どこで引くかを決める。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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