食事|食事の実装
この章の狙い
要点: 続かない原因は意志ではなく設計にある。守れる型を先に作り、1日ではなく1週間の合計で判断する。
第4章から第6章までで、量・配分・補うものが決まった。しかし紙の上の計画は、忙しい水曜日の夜には役に立たない。
この章で作るのは、考えなくても実行できる型である。毎食その場で判断していると、疲れているときに必ず崩れる。
1食の型を決める
まず、道具がなくても量れる型を持つ。
主菜は手のひら1枚、主食は握りこぶし1つ、野菜は両手いっぱい、油は親指1本。これを1食の基本形として、3食そろえる。
この型の利点は、外食でも旅行先でも使えることである。皿を見て「主菜が手のひら1枚あるか」「野菜が足りているか」だけを確かめればよい。
体格に応じて自動で量が変わるのも都合がよい。手の大きさは体格とおおむね比例する。
動いた日は主食を増やし、動かない日は減らす。 調整するのはここだけでよい。主菜と野菜は毎日そろえる。
1週間を先に設計する
1日単位で完璧を目指すと、外食の予定が入っただけで崩れる。判断の単位を1週間にする。
先に決めるのは3つである。
1. 買い物の日。 週に1回か2回、曜日を決める。冷蔵庫に食材がないことが、外食と間食の最大の原因になる。
2. 作り置きの時間。 1時間でよい。肉か魚を3食ぶん焼くか煮る、卵をゆでる、野菜をゆでる、ごはんを炊いて小分けにして冷凍する。これだけで平日の夜が数分で終わる。
3. 外食と自由の枠。 週に2日ほど、あらかじめ空けておく。先に置くことが大事である。 あとから足すと、計画の外側の食事になり、帳尻が合わなくなる。
週7日のうち5日が型どおりなら、残り2日はかなり自由でよい。合計で見れば十分に収まる。
⚡ 1週間の設計
- 買い物の曜日を固定する
- 週1時間の作り置きで平日の夜を短縮する
- 外食と自由の枠を先に2日置く
- 判断は1日ではなく1週間の合計で行う
コンビニと外食の型
自炊できない日のほうが多い人もいる。その場合は、店ごとの選び方を型にする。
コンビニ。主菜になるもの(サラダチキン、焼き魚、ゆで卵、納豆、豆腐)を1つ、主食を1つ、野菜かスープを1つ。この3点で組む。菓子パン1つで済ませると、タンパク質はほぼ入らない。
定食屋。もっとも簡単である。焼き魚定食、生姜焼き定食、鶏の定食。ごはんの量だけ調整する。
牛丼・カレー・ラーメン。主食が多く、タンパク質が相対的に少ない。選ぶなら、卵や肉を追加し、サラダを足す。
居酒屋。刺身、焼き鳥(塩)、冷ややっこ、枝豆、焼き魚は、そのまま主菜として使える。揚げ物と締めの炭水化物を外すだけで大きく変わる。
イタリアンや洋食。パスタやピザだけで終わらせず、肉か魚の皿を1つ入れる。
⚠️ 外食でやりがちな誤り
- 「今日は外食だから」と、その1食で1日ぶんの帳尻を崩す。
- 主食だけの食事(麺、丼、パン)が続き、タンパク質が不足する。
- 昼を抜いて夜に取り返す。夜の量が増えて、睡眠にもひびく。
会食と飲み会の日
会食は避けられない。だから「避ける」のではなく「扱い方」を決めておく。
当日の前後。 前日や翌日に極端に減らす必要はない。ただし、当日の昼はタンパク質と野菜を中心にして、主食を控えめにしておくと、夜の余裕が生まれる。
注文の順。 最初にタンパク質のものと野菜を頼む。空腹のまま揚げ物から入ると、量が止まらなくなる。
酒の扱い。 酒そのもののエネルギーに加えて、酒は食欲を上げ、判断を鈍らせる。詳しくは第16章で扱うが、実務としては「本数を先に決める」「合間に水を挟む」「締めを頼まない」の3つで大半が防げる。
翌日。 前日の食べ過ぎを、翌日の絶食で取り返そうとしない。反動でまた食べ過ぎる。いつもの型に戻すだけでよい。
旅行と出張
数日間、環境が変わる場面での最低ラインを決めておく。
朝食を型にする。 ホテルの朝食なら、卵料理、ヨーグルト、果物、野菜。これで1日の土台ができる。
1日1回は主菜を確保する。 タンパク質が丸1日抜けると、筋肉の維持に不利になる。
歩く。 移動が多い日は、それだけで活動量が確保できる。
体重は帰ってから測る。 旅行中は塩分と水分で簡単に増える。脂肪が増えたわけではない。
忙しい日の最低ライン
すべてが崩れる日は必ずある。その日のために、3つだけの最低ラインを決めておく。
- タンパク質を1日に2回は取る(不足を最小限にする)
- 甘い飲み物を飲まない(最も無駄なエネルギー)
- 寝る時刻を守る(翌日の食欲と判断力を守る)
これだけ守れれば、その日は「失敗」ではない。ゼロか100かで考えると、1回の失敗で全部を投げ出すことになる。
- 📘 最低ライン:うまくいかない日でも守る最小限の行動。完璧をあきらめる代わりに、崩壊を防ぐための線。
食べ過ぎた日の戻し方
計画から外れる日は必ず来る。問題は、その後の対応で1日が1週間に広がることである。
次の1食から戻す。 「今日はもうだめだから明日から」と考えると、24時間ぶんが失われる。
罪悪感を対策に置き換える。 なぜそうなったかを1行だけ書く。「昼を抜いた」「寝不足だった」「家に菓子があった」。原因が分かれば、次に防げる。
極端な埋め合わせをしない。 翌日の絶食や、長時間の有酸素運動での帳消しは、反動を生む。週の合計で見れば、1日の超過は数百キロカロリーであることが多い。
体重の跳ね上がりに反応しない。 食べた翌日は、塩分と炭水化物で水分が増える。脂肪ではない。数日で戻る。
家族や同居人がいる場合
自分だけ別の食事を作るのは続かない。同じ料理で、自分の皿の配分を変えるのが現実的である。
主菜を1品足す(ゆで卵、納豆、豆腐)、主食の量を自分だけ減らす、野菜を大皿で共有する。これで大半は解決する。
家に菓子や甘い飲み物を置く場合は、自分の目に入る場所に置かない。意志の力に頼るより、環境を変えるほうが確実である。この考え方は第14章と第15章でも繰り返し出てくる。
自炊の最小セット
料理をしてこなかった人が、いきなり品数を増やす必要はない。次の3つの型だけで、平日は回る。
型1:焼くだけ。 肉か魚に塩をして焼く。付け合わせは冷凍野菜。10分。
型2:まとめて煮る。 鶏肉、野菜、豆を鍋に入れて煮る。数食ぶんできる。味を変えれば飽きない。
型3:のせるだけ。 ごはんに、納豆、卵、冷凍のほうれん草、缶詰の魚をのせる。5分。
道具も多くはいらない。フライパン1つ、鍋1つ、はかり、保存容器。はかりは最初の1か月だけでも役に立つ。自分の「だいたい」がどれくらいずれているかが分かる。
続かないときの切り分け
型を作っても続かないときは、意志の問題として片づけない。原因は次のどれかであることが多い。
1. 目標が厳しすぎる。 減量のペースが速すぎると、空腹で必ず破れる。第4章に戻る。
2. 準備がない。 冷蔵庫に食材がないと、その日の夜は必ず外で買うことになる。
3. 型が生活と合っていない。 朝に時間がない人が朝食を作る型を選べば、続かない。
4. 睡眠が足りていない。 睡眠不足は食欲を上げ、判断を鈍らせる。食事の問題に見えて、原因は第13章にあることが非常に多い。
5. 完璧を求めている。 1回崩れると全部やめる、を繰り返している。
原因が分かれば、直す場所が決まる。続かないのは性格ではなく、設計の問題として扱う。
買い物リストを固定する
毎回考えるから面倒になる。買うものを固定すれば、買い物は5分で終わる。
| 区分 | 常備するもの |
|---|---|
| 主菜になるもの | 鶏むね肉、豚もも肉、さけ、さばの缶詰、卵、納豆、木綿豆腐 |
| 主食 | 米、オートミール、全粒のパン、冷凍のごはん |
| 野菜 | 冷凍のブロッコリー、ほうれん草、キャベツ、玉ねぎ、きのこ |
| 常温で置けるもの | ツナ缶、豆の水煮、乾燥わかめ、のり |
| その他 | ヨーグルト、ナッツ、オリーブ油、プロテインパウダー |
冷凍野菜を軽く見ない。 切る手間がなく、傷まず、栄養も大きくは変わらない。自炊が続くかどうかは、洗って切る工程を省けるかで決まることが多い。
朝・昼・夜の型を1つずつ持つ
3食それぞれに「これで済ませる」型を1つ決めておく。迷う時間がなくなる。
朝の型(5分)。オートミールにヨーグルトと果物、あるいはごはんに卵と納豆。タンパク質20グラムを確保する。
朝食を抜く人は、その日のタンパク質が不足しやすい。抜くこと自体が悪いのではなく、残りの2食で140グラムを取るのが難しいという現実的な問題である。
昼の型。外なら定食、社食なら主菜を1品足す、弁当なら作り置きの主菜とごはんと野菜。
昼に主食を大量に取ると、午後に眠気が来る人がいる。第15章で扱うが、主食を1つ減らして主菜を増やすだけで変わることが多い。
夜の型。作り置きの主菜、野菜、主食は少なめ。就寝の2〜3時間前までに済ませる。遅い時間の大量の食事は、寝つきと睡眠の質を落とす。
間食を設計する
間食は敵ではない。設計されていない間食が問題なのである。
昼と夜のあいだが7時間以上あく人は、間食を入れたほうが夜の食べ過ぎを防げる。選ぶものは決めておく。
- ゆで卵、ギリシャヨーグルト、サラダチキン、するめ、チーズ
- ナッツ(25グラムまで。手のひらに軽く1杯)
- 果物(りんご、バナナ、みかん)
- プロテインパウダー1杯
買い置きしないものも決めておく。 家に菓子があれば食べる。これは意志ではなく距離の問題である。買わない、置かない、見えないところに置く。
職場での食べ方
平日の食事の多くは職場で起きる。ここを設計しないと、週5日ぶんが崩れる。
引き出しに常備する。 プロテインパウダーの小分け、ナッツ、缶詰。急な残業でも、コンビニの菓子パンに走らずに済む。
社食では主菜を先に選ぶ。 定食があるなら定食。麺だけの日を作らない。
会議が続く日は、水を確保する。 脱水は集中力を落とす。喉の渇きを空腹と勘違いすることもある。
差し入れの菓子。 断る必要はないが、「その日の自由枠を使った」と考える。週の合計で見れば収まる。
飽きない工夫
同じものを食べ続けると、必ず飽きて崩れる。飽きへの対処は、食材ではなく味の変化で行う。
主菜は鶏むね肉のままでも、塩とこしょう、しょうゆとしょうが、カレー粉、みそ、トマト、香辛料で、まったく別の料理になる。
もう1つの手は、主食を変えることである。ごはん、オートミール、全粒のパン、いも類。同じ量でも印象が変わる。
飽きたときに、いきなり型そのものを捨てないこと。変えるのは味と主食であって、構成ではない。
費用と時間を見積もる
続けられるかどうかは、金と時間で決まる面がある。あらかじめ見積もっておく。
食費。自炊が中心なら、外食中心より安くなることが多い。鶏むね肉、卵、豆腐、冷凍野菜、米は、いずれも安価でタンパク質と栄養の効率が良い。
時間。週1時間の作り置きと、1食10分の調理。1週間あたり合計で3時間ほどである。外食に行き来する時間と比べれば、大きな差ではない。
プロテインパウダー。1食あたりの費用で見ると、肉や魚より安いことが多い。不足を埋める道具としては費用対効果が高い。
高価な食材や特別な食品は不要である。この教材の内容は、近所のスーパーで完結する。
食欲が強い日の対処
同じ生活をしていても、やたらと空腹の日がある。原因はたいてい次のどれかである。
睡眠不足。 食欲を高めるホルモンが増え、抑えるホルモンが減る。前夜の睡眠が短ければ、その日の食欲は強くなる。
タンパク質の不足。 前日と当日の合計を見返す。足りていないことが多い。
水分の不足。 喉の渇きは空腹に似た感覚として出ることがある。まず水を飲んで15分待つ。
エネルギー不足の蓄積。 何日も強く制限していれば、身体は取り返そうとする。第4章の維持期間を挟む。
強いストレス。 第14章で扱う。原因が食事の外にあるときは、食事側でいくら我慢しても解決しない。
対処は、我慢を増やすことではない。原因に合わせて、寝る・タンパク質を足す・水を飲む・食べる量を戻すのいずれかを選ぶ。
⚠️ 実装でやりがちな誤り
- 1日単位で完璧を目指し、外食の予定で崩れる。
- 外食の枠を先に置かず、あとから足していく。
- 食べ過ぎた翌日に絶食して取り返そうとする。
- 家族と別メニューを作ろうとして、続かなくなる。
- 食材の準備をしないまま、意志だけで乗り切ろうとする。
- 食事が崩れる原因が睡眠不足にあることに気づいていない。
⚡ 第7章の通過チェック
- 1食の型を、道具なしで説明できる
- 1週間の設計で先に決める3つを言える
- コンビニで3点を組む型を言える
- 忙しい日の最低ライン3つを自分の言葉で決めてある
- 食べ過ぎた日の戻し方を言える
- 続かないときに疑う5つを挙げられる
次章へ
ここまでで食事の部が終わった。ここからは第3部、トレーニングに入る。第8章では、筋肉が大きくなる条件そのものを扱う。何が刺激になり、何が回復を決めるのか。ここを押さえると、流行の種目やプログラムに振り回されなくなる。